先生、甘い診察してください


「あの…、先生」


肩を軽く揺すってみると、



「んぅ……」


起きたくないと言わんばかりに、フルフルと首を横に振ってる。


私は隣に腰を降ろして、ジッと先生の顔を見つめた。



「…やっぱ、童顔」


思わず笑みが零れて、指でそっと頬を突いた。




「…悪かったね。童顔で」

「え?」


腕を急に掴まれて、軽く混乱した。



「せっ、先生っ!寝てたんじゃ…」


さっきまでスヤスヤ寝てたのに…。




「ウトウトしてただけ」


いやいや、明らかに寝てましたけど?





あれ?もしかして今…、チャンス?


お茶に誘う、絶好のチャンスなんじゃないの?



「あ、あのっ…」

「ん?どした?」

「せっ…、先生っ!よかったら」


勇気を振り絞って、言おうとしたら、




「ちょっとー、いつまでそこ独占してんの?早く診察始めたら?」


診察室から出てきたのはお兄ちゃん。




「治療の準備はしてあるから、早くしな。つーか智也、待合室で寝るな」



もうっ!!お兄ちゃんの馬鹿っ!!少しは空気読んでよ!!


< 58 / 497 >

この作品をシェア

pagetop