先生、甘い診察してください


「家の場所、よくわかりましたね」

「昔、何度か来た事あるから」


昔って事は、お兄ちゃんとは長いお付き合いって事?





「じゃあ、行こうか」

「はいっ!」



あぁ、どうしよう、緊張してきた。


治療の時とは訳が違うもん。




「今日は良い天気だね~」

「そうですね…」


…先生、私の格好とか髪型とか、何も言ってくれないや。


髪の毛結んで、少し雰囲気変えたら、何か言ってくれるかなって思ったのに。




「あやちゃん」

「はい?」


急に名前を呼ばれた。



「こっち側、歩いて」


肩を掴まれて、道の端へと誘導され、先生は車道側に。



「車道側は、男が歩くのが、鉄則だよ」

「へ?あ、えっと…ありがとうございます」


鉄則なのかは知らないけど、何気ない気遣いにキュンッときた。



「ねぇ、その服……」


服、という単語を聞いて一気に胸が高鳴った。




「あんま着ない方がいいと思う」


期待外れの言葉だった。


似合ってないって事?お気に入りなんだけど……。



「や、やっぱ…ピンクのワンピースとか、似合わない、ですよね…?すみません、なんか…」



落ち込むけど、笑って乗り切ろう。



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