先生、甘い診察してください
「…もしかして、歯痛いの?」
お兄ちゃんの口からサラリと出た言葉にヒヤッとしながらも、
「…うん」
正直に返事をした。どんな言い訳をしたってを誤魔化せるわけがない。
「…そっか」
「怒らないの?」
あっさりした反応に、少し唖然とした。
「怒るわけないでしょ?あやは大事な妹だもん」
「……」
出た!お兄ちゃんのシスコン発言。しっかり者のお兄ちゃんだけど、こういうところは妙に可愛らしく感じてしまう。
「それに、あやだって、好きで虫歯にしたわけじゃないよね?」
「…うん」
「歯、今も痛いの?」
「うん…」
自然と目からは涙が滲んできた。肩の荷が下りたような気分だった。
お兄ちゃんは何も言わず、ポンポンと頭を撫でてくれた。
「歯が痛いのは…いつから?」
「えっ…」
「いつ頃から、痛かったのかな?」
1番答えにくい質問だった。
ずっと前からなんて…言えるわけがない。
私は何も答えず、俯いて黙り込んだ。