先生、甘い診察してください
お兄ちゃんは、私が答えるのを黙って待ってる。
だけど言葉が出てこなかった。喉に詰まってしまったみたいに。
(ずっと前から放置してた、なんて…。言えない)
答えられなくて、困り果てていると、
「…言いにくいよね?ごめんね。仕事の癖でつい聞いちゃって。答えなくていいよ」
お兄ちゃんって、どこまで優しいの?優しいにも…程があるよ。
「ところで、歯科検診で治療勧告とかもらってない?」
「…もらってる」
「それ、見せてもらってもいい?」
「今、取ってくる」
自分の部屋に行き、机の引き出しの奥から少しヨレヨレになってる治療勧告を取り出した。
「はい…」
「ん。どれどれ」
ソファーに座ってるお兄ちゃんに治療勧告を差し出して、私も隣に座った。
「あや、痛い歯は1本だけ?」
「えっと…」
ふいに聞かれて、考える。
基本的にかなり痛いのは、右下の奥歯だけど…。他にも沁みる歯があるような気がする…。