先生、甘い診察してください
「あ、雨が止んでる」
「へ?」
目を開くと、先生は窓際に移動して、窓の外を見ていた。
さっきまでの空気はどこへやら。一気に緩い空気に変わった。
何だったの?さっきの。
もしかして、先生の気まぐれ?
「あやちゃん」
頭の中でグルグルと考えてる時、名前を呼ばれて、我に返った。
「どうする?もう少し、ゆっくりしていく?」
「い、いえ……。今日はもう帰ります」
門限もあるし、このままここにいたら、いろんな意味でヤバイそう。
「送るよ」
「いいですよ」
「送らせて。ここからどうやって家まで帰ればいいか、わからないでしょ?」
言われてみれば、確かに。
「お願いします」
「んふふ。素直でよろしい」
先生には家の近くまで送ってもらった。一緒にいる所を万が一、お兄ちゃんに見られたらマズイからね。
「もう、ここまででいいです。今日は、いろいろとありがとうございました」
「ううん。僕の方こそ、ありがとう。あやちゃんと一緒にいて、楽しかった」
また……。
またそうやって、私を期待させる。
「じゃあまた、治療の日にね」
「はい……」
帰っていく先生の後ろ姿を、私はいつまでも見つめた。