先生、甘い診察してください
「さて、あやちゃん」
ポーっと浮かれてると、先生が急に腕を掴んできた。
「甘い物食べたから、歯磨きしようか。新品の歯ブラシがあったと思うから」
腕を引っ張られ、洗面所に連行された。
「はい。どうぞ」
歯磨き粉を適量つけた新品の歯ブラシを差し出され、渋々ながらも受け取った。
「先生の見てる前で、磨くんですか?」
「うん」
人が見てる前で、ましてや好きな人の前でって……。
「恥ずかしいとか、気にしなくていいよ?」
やらざる得ないかな……。
恥ずかしさもあったけど、先生の見てる前で、いつもみたいに歯磨きをした。
「あーんして」
歯磨きを終えた途端に、頬に手を添えられ、口を開けるよう促された。
「……やっぱ、磨き残しがあるなぁ」
小さく独り言のように呟いた。
「前歯は綺麗に磨けてるけど、奥歯は磨き残しがあるよ?ブラシが届きにくいから、仕方ないかもしれないけど、根気強く丁寧にね」
好きな人にこういう指摘をされるのは、いたたまれない気持ちになる。
「ごめんなさい……」
「あっ!お説教みたいに聞こえた?ごめんね。今度からはもっと優しく言うよ」
ううん、先生は十分優しいですよ……。