先生、甘い診察してください


「さて、あやちゃん」


ポーっと浮かれてると、先生が急に腕を掴んできた。




「甘い物食べたから、歯磨きしようか。新品の歯ブラシがあったと思うから」


腕を引っ張られ、洗面所に連行された。





「はい。どうぞ」



歯磨き粉を適量つけた新品の歯ブラシを差し出され、渋々ながらも受け取った。




「先生の見てる前で、磨くんですか?」

「うん」


人が見てる前で、ましてや好きな人の前でって……。




「恥ずかしいとか、気にしなくていいよ?」


やらざる得ないかな……。




恥ずかしさもあったけど、先生の見てる前で、いつもみたいに歯磨きをした。





「あーんして」



歯磨きを終えた途端に、頬に手を添えられ、口を開けるよう促された。




「……やっぱ、磨き残しがあるなぁ」



小さく独り言のように呟いた。



「前歯は綺麗に磨けてるけど、奥歯は磨き残しがあるよ?ブラシが届きにくいから、仕方ないかもしれないけど、根気強く丁寧にね」


好きな人にこういう指摘をされるのは、いたたまれない気持ちになる。



「ごめんなさい……」

「あっ!お説教みたいに聞こえた?ごめんね。今度からはもっと優しく言うよ」


ううん、先生は十分優しいですよ……。


< 98 / 497 >

この作品をシェア

pagetop