先生、甘い診察してください
「僕が磨いてあげる。あーん」
促されるがまま、口を開くと、歯磨き粉が適量つけられた歯ブラシを口の中に押し込まれた。
「いい?ゆっくりと、丁寧に磨くのがコツだよ?」
この年にもなって、誰かに歯を磨いてもらうなんて、変な感じ。
「1本1本丁寧に、あんまり力は入れなくていい。力を入れ過ぎると、歯茎が傷つくから、軽い力で、優しくね」
先生は、歯医者さんモードになってるけど、眼差しは真剣かつ、優しいものだった。
“好き”って、たった一言。
もし同級生ならば、とっくに告白してたかもしれないのに……。
「終わったから、口ゆすいでいいよ」
「あ、はい」
それにしても、テスト勉強しに来ただけなのに、こんなドキドキ連発なんて。
ある意味、テスト様様かも。
そして迎えた、テスト当日。
「テスト開始!」
その声と共に、一斉に静まり返った。
(あ、この問題、先生と一緒に勉強した所だぁ)
いつもなら、1問目で躓いたりするのに、今回はわりとスラスラ解けた。