BitteR SweeT StrawberrY
ケイにとっては、何気ない、それこそ、ケイの中の普通に従った言葉だったんだと思う。
でも、あたしは、その言葉に閉口するしかなかった。

ケイの口から、その言葉が出た時、何かが、すごい音を立てて・・・あたしの心にぶつかったから。
確かにその通りだって・・・・そんな単純なことに、今更気付いたから。

やっぱりあたしは、形式とか形とかに、こだわり過ぎるのかもしれない。
なんだかよくわからないけど、ケイのその言葉は、どこか卑屈だったあたしの心に、ガツンと、一発強烈なパンチを食らわせてくれたような気がした。

「うん・・・そうだね・・・そうですよね・・・ケイさんは、ケイさん・・・ですね」

あたしは、ケイの綺麗な顔を見つめて、ぎこちない笑いをしてしまった。

「優子も優子だろ?どんな仕事してても、どんな生活しててもさ?」

「・・・・う、うん・・・ですね!」

「うん」

「ありがとうございました、なんか、すごく、人生勉強した気分」

「なんだそれ?」

「ああ・・・いえ、なんでもないです・・・じゃ、帰りますね」

「優子」

ドアの取っ手に、手をかけたあたしを、ケイのハスキーな声が呼び止める。

「?」

あたしは、何も考え無しに、ケイを振り返った。
いつの間にか、ケイが、真後ろに立ってた。

「え???」

「これ、うちの店の恒例行事なんだよね」

なんだか思惑ありそうに笑ったケイが・・・・
口紅もつけていないケイの綺麗な唇が・・・
次の瞬間、あたしの唇に触れた。

慌てふためいたあたしは、その場で思い切りフリーズ。

「お疲れさまのキスね」

ケイは悪びれもしないで、おかしそうに笑っていた。

その後、なんて言ってケイの部屋を出たのか、あたしはもう覚えてもいない。
心臓が爆発しそうなほど、どきどきしてたことと、ケイの唇が、すごく柔らかくて、イチゴを練りこんだ生クリームみたいに甘くて、煙草の匂いで少し苦かったのだけは、はっきりと覚えてる。

ケイが言ってた、お疲れ様のキスと恒例行事という言葉が、あたしの中でまともに繋がるのは、その日から、少し経ってからのことだった。



< 10 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop