BitteR SweeT StrawberrY
ケイは、そんなあたしに横目を向けて、言葉を続ける。

「あっちが浮気してたとしても、それをどう受け止めるかじゃないか?
ただの浮気なのか、本気なのか・・・確かめるのも、確かめないかも、許すか許さないかも、結局は優子次第だよ。
プロポーズしてくるぐらいだから、まぁ、優子のことはそれなりに思ってるとは思うけど。
時々、体裁を繕うのに、結婚を盾にとる奴もいるけど。
オレは優子の彼氏のことは知らないし、どんな奴かもわからないけど。
真面目そうなやつに限って、結構えげつないことする確立は高いかもな。
それで、優子はどうしたいの?」

「どうしたい・・・どうしたいんだろう?」

「まずはそこか」

ケイはくすくすと笑った。
あたしは、そんなケイの綺麗な横顔をちらっと見て、思わず、うつむいてしまう。

「どうしたい・・・・
どうしたいとか・・・なんかよく判らないけど・・・
今、わかってるのは・・・
こんなこと言うの・・・すごいひどいし、ずるいと思うけど・・・
あたしは・・・大ちゃんより・・・
ケイの方が・・・好き・・・
だからきっとどこかで、ちゃんと、区切りをつけないと・・・って、そう思ってる。
ただ、ばしって区切る方法が・・・わからなくて・・・」

あたしのこの話しを聞いて、ケイがどんな表情をしたか・・・あたしは、なんだか怖くて、ケイを振り返れなかった。
ケイは、どう思っただろう・・・
あたしは、ずるいやつだって・・・
軽蔑したかな・・・

自分でそんな話しを振っておいて、変に怖気づいたあたしは、それ以上言葉が出せなかった。
少しの沈黙の後、そんなあたしの髪に、ふわって、やわらかな感触が降って来て、あたしは、びくって肩を震わせた。
恐る恐る振り向くと、ちょっとだけ呆れたように笑っているケイが、さっきと同じように、あたしの髪を撫でていた。
ケイは、静かな声で言う。

「区切りをつけようって思ってるのは、成長だな。多分。
自己主張するための準備段階ってことなのかも。
優子は彼氏に対して、自分の気持ちぶつけたことないんだろ?」

「う・・・うん・・・」

「これが普通だって、自分にそう思いこませて、自分の欲求とか不満とかを、全部、飲み込んできただけだ」

「・・・・・ん・・・そ、そうなのかな?」

「そうだと思う。
だけど、今まで普通だって思ってたことが、実は普通じゃないことだって、こんな時期になって気付いたってだけのことだ。
おまえは自分で、どうしたいかわからないって言うけど。
ほんとはもう、どうすればいいのか、わかってるんだよ、きっと。
あとは、それを切り出す勇気を持つだけ」

「・・・・・そうか・・・勇気・・・なんだ・・・」

「うん・・・
何かを切り捨てようとか、何か新しいことを始めようとか、そういう時ってさ、自分が傷ついてもいいから、次に進もうってする勇気が必要になる訳だ。
人生に何度か・・・・そういう時がある。
岐路っていうのかな?
多分優子は・・・・・
優子、前に言ってただろ?目標が欲しいって?」

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