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「うん」

「目標が欲しいって思ったあの時点で、優子はもう、分岐点にいたんだと思う。
だから、どっちを選択するかは、もう優子の意思と勇気次第。
本気で、何かをするつもりなら、確実にどちらかを選ばないといけない時だってある。
選択をする勇気は、必要なんだよ。
例え・・・大怪我をしても・・・
どちらかを選ばなくちゃいけない時って・・・あるから」

そう言ったケイの瞳が、ふと、遠いところを見た気がした。
その瞳は、なんだか、とても、切ない瞳だった。
だけど、凄く強い瞳だった。
それを見て、あたしは思った。

きっとケイは、過去に、重症を追うぐらいの大きな選択をしたことがあるんだなって・・・
あたしの頭に、ふと、佐野さんの顔が浮かぶ。
あたしの胸も奥が、ぎゅって痛んだ。
あたしは、ケイの瞳を見つめたまま、少しの間、押し黙ってしまった。

大怪我をしても・・・選ばないといけない時がある・・・

その言葉が、あたしの心にゆっくりと、じんわりと、浸透するように響いていく。
でも、まだ、どこかで選択することを躊躇ってる自分もいる。
わかってるんだ・・・
ケイの言うとおり、あたしはきっと判ってるんだ・・・
どうしたいのか・・・
あたしは、少しだけうつむいて、小さな声でこう言った。

「うん・・・ケイの言う通りだと思う・・・
そうだね・・・
あたしには・・・勇気が足りないのかもしれない・・・」

「そうかもな」

「ねぇ・・・ケイ？」

「ん？」

「あたしにも、勇気・・・もてるかな？」

あたしが言ったその言葉に、ケイは、やわらかく笑ってこう答える。

「持てるよ・・・・」

「そっか・・・」

ケイの言葉には、きっと、魔法かなにかがあるんじゃないかと思う。
ケイにそう言われただけで、その気になってしまうから、本当に不思議だった。
きっとこれも、ケイの魅力の一つなんだなって、今更そんなことを思ってしまう。

「ケイって、やっぱりすごいね・・・・」

「どうして？」

「ん？なんか凄いから・・・」

「よくわかんない答えだな」

ケイはそう言って笑った。
あたしは、ちょっとだけ安心して笑ってしまう。
ケイの笑顔を見てたら、あたしは、急にケイの唇が恋しくなって、少し照れたけど、思い切って手を伸ばして、ケイのほっぺに触ってみた。
ケイは、ゆっくりとあたしに目を向けると、優しくて甘い視線で、あたしを見つめる。
あたしの心臓がまた、どきどきと、 大きな音を立てはじめた。

ケイに・・・
触りたい・・・・
ケイに・・・
キスしてもらいたい・・・

あたしの心臓は、まるでそう言ってるみたいに、どくんどくんって高鳴っていった。
ケイは、ほっぺに押し当てたあたしの手を柔らかく握って、まるであたしの体温を確かめるみたいに目を閉じると、小さく微笑んだ。

ケイの肌は、シルクみたいにすべすべで、すごく柔らかい。
ケイはあたしの肌も柔らかいって言うけど、きっとあたしの肌なんか比じゃないと思う。
すこしひんやりとしている、ケイのほっぺ。