BitteR SweeT StrawberrY
【4】~S~
それから数日、あたしは、何かがおかしかった。

気付くとぼーっとして、窓の外なんか眺めたりなんかして・・・見事なほどに仕事が遅れていく。
見かねた課長が、「具合でも悪いのか?」と聞いてきたぐらい、ほんとにあたしは、何かがおかしかった。

それもこれも・・・・と、考えると、変に腹が立ってくるのは、どうしてかな・・・?

高校生の頃、付き合った彼氏は二つ年上の先輩だった。
あたしが告った訳じゃなかった、むしろ、告られてしまったから・・・
部活の先輩だったし、あたしも、特に気になる人とかいなくて、先輩はいい人だったし、嫌いじゃなかったから、そのまま、大学を卒業するまで付き合ってみた。
そんな先輩と初めてキスしたときも、こんな感じにぼーっと・・・してなかったと思う。

あたしってば馬鹿じゃないの・・・と、いま、本気で思ってる。

だって・・・
だって・・・
別にキスなんて初めてじゃないし、いい歳して、大したことないじゃないって思うけど・・・・
女の人とキスなんて初めてだったから・・・・
もう、なんていうか・・・
男の人の唇とは全然違ってて・・・
あんなに柔らかい唇にいきなりキスされたら!
誰だって!
誰だって・・・・どきどきする・・・!
と、思う・・・

パソコンの画面を、ぼんやりと眺めていると、デスクの引き出しに入れて置いた携帯から、思い切りメールの着信音が鳴る。

「あっ・・・やばっ!」

携帯をバイブにするの忘れてた!
同僚と上司の痛い視線に、「すいません!」と言いながら慌てて携帯を開いて、マナーモードにする。

メールの相手は、今の彼氏、村木 大輔からだった。
こそこそとメールを開くと、『今度は北海道に出張だって~><またしばらく会えないね~お土産、買ってくるよ~』と、どこか脳天気な文章が書かれていた。

「大ちゃん・・・また、出張なんだ・・・」

あたしは、思わず、ため息をつく。
大輔とは、もう付き合って三年になる。
大輔は、うちの会社の取引先の営業マンで、入社当時からよく会社で顔を合わせていた。
そんな大輔も、こんな平凡なあたしに、告白してきてくれた人だった。
感じがいいし、好青年ぽかったし、真面目だし、付き合っても悪くないかな・・・って、嫌いじゃないしと思って、付き合い出した人だった。
上司とか両親は、そろそろ結婚かな?なんて・・・脳天気に言って来るようになった。

大輔のことは嫌いじゃないし、もちろん、好き。
でも、なんだか、このままこの人と、平凡に結婚するんだなって思うと、ちょっとだけ、虚しくなったりもする。
なんなんだろうな・・・

あたし・・・
あたしの人生って、ほんとに・・・
平凡を絵に描いたような人生なんだな・・・
きっと・・・
そう思った時は、あたしは、今更ながらに気付いてしまったのだ。

そういえば・・・・
あたしは、自分から誰かを好きになったことって、ないかもしれない・・・
思い切り、大好きって思ったこと、なかったかもしれない・・・
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