BitteR SweeT StrawberrY
      *
いつものように、検品作業を開始したあたし。
黙々と、伝票とダンボールの中身を確認するだけなんだけど・・・
根暗だなって思ってもやっぱり、この作業は楽しい!
ストックヤードのドアの向こうに、お客さんの足音が増えてきた。
作業を続けるあたしは、ふと、この間、「表をやってみるか?」ってケイに言われたことを思い出す。
今のあたしに、接客をうまくこなせる自信はない・・・
ケイはああ言ってくれたけど、あたし自身は、やっぱりお客さんの相手は向いてない気がするんだよね。
それとも、やっぱりこれも、あたしが、そう思いこんでるだけなのかな?
ダンボールの中身を確かめながら、そんなことを考えこんでいた時、不意に、ジャケットのポッケに入れておいた携帯がブルって震えた。
あたしはハッとして、ポッケの中から携帯を取り出して開いてみると、メールの着信を知らせるアイコンが表示されている。
受信BOXを開いてみると、メールの送り主は、美保だった。

『明日誕生日だね~(ノ´▽`)ノ♪
きっと予定があるんだろうけど(笑)
村木さんか・・・それとも、例の片思いの彼なのか(*ノノ)
(≧∇≦)キャー♪
それで本題なんだけど・・・
実はね・・・
うーん、また、ちょっと気になる情報を入手してしまったんだけど・・・
イベントが過ぎたら話すよ~(・ω・)
とりあえず、予定あるなら楽しくやってきてね~♪』

あたしは、思わず笑った。

「もぉ・・・美保ってば」

でも、まだ、あたしには、片思いの“彼”じゃなくて、実は“彼女”なんだよって、美保に言う勇気はない。
女の人を好きになって、彼氏よりもその人のことが好きになってしまったみたいなんて、あたしには・・・そんなこと言えない。
心のどこかで、あたしは怖がってるんだ・・・
もし、美保に全てを打ち明けた時、美保がどう思うか・・・
軽蔑されるんじゃないかって・・・
そういうことを、怖がってるあたしが、確かにここにいる・・・
あたしは、ほんとに、弱虫だなって思う。
勇気が足りないんだ・・・
あたしにはまだ・・・
もう一度、美保からのメールを読み返してみる。

「ちょっと気になる情報って・・・なんのことだろ・・・
大ちゃんのことかな・・・」

あたしは、メールの返信画面を開いた。

『おつかれさま~
誕生日は・・・なんか、大ちゃんはゴルフらしくて、今日の昼間どうかって言われたんだけど、あたし、バイトでさ。
実は今、バイト中だったりしてるw
明日は・・・・なんか、例の人から、どこかでかけようか?って言われて・・・
そのつもりでいるんだ(・ω・)
気になる情報って・・・大ちゃんのことかな?
気になるとか言われたら、ほんとに気になっちゃうよw』

そう書いて送信ボタンを押して、あたしはまた、作業に戻る。
こんな時間にメールしてくるなんて、美保は今日、ずっと家にいるのかなぁ・・・なんて、思っていると。
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