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あたしは、そんな佐野さんをちらっと横目で見て、ストックヤードを出ようとする。

「優子」

「え?!あ、はい!」

突然、呼び止められて振り返ると、佐野さんは、相変わらず棚の荷物を眺めたまま、少しだけ沈んだ声でこう言っ
た。

「ケイ、具合良さそうか?」

「あ~・・・多分、元気かと。時々、顔色悪い時もありますけど、別に、普段と何も変わってないと思いますよ」

「そうか、ならいいや・・・っーか、ほんとに、なんかあったら、ちゃんと連絡くれよな」

佐野さんは、ゆっくりあたしに振り返る。
唇だけで、どこか切なそうに笑う佐野さんの笑顔は、時々、ケイがあたしに見せる、あの切ない笑顔とよく似ていた・・・

あたしは、ちょっとだけ戸惑って、でも、取りあえず、普通に笑顔で「はい」って答えた。
佐野さんとケイとの繋がりは、きっと、あたしが思ってるよりずっとずっと深いんじゃないかって、その時、あたしは思った。
もしかすると、あたしが入る隙間なんか無いぐらい、深くて強い絆なんじゃないかって、無意識の感がそう言っていた。

どんなにあたしが、ケイのことを好きでも・・・
どんなにあたしが、ケイを思っても・・・
もしかすると、あたしは、やっぱり、佐野さんには敵わないんじゃないかって・・・
そう思った・・・

ぎゅうって胸が痛くなったから、あたしは、逃げるようにストックヤードのドアを出た。
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