BitteR SweeT StrawberrY
*
案の定、今日も残業になってしまった。
せめてもの救いは、次の日が土曜日だったってこと。
あんまり長く残業もできないので急ぎの書類だけを作ってから、あたしは、一人で会社を出た。
時計の針は、夜の七時を少し過ぎた時間を差していた。
駅までの人ごみは相変わらずで、疲れて、そんなに早く歩きたくないのに、あたしの足は、人の流れに合わせて自然に早足になる。
大輔にメールを、返しておかないとな・・・
そう思ってバックの中の携帯を手に取ると、財布がストラップに引っかかって、携帯ごと財布も釣れてしまった。
「ああ・・・もぉ・・・」
あたしは、何気なく、携帯のストラップにひっかかった財布を外す。
その時、バックにしまおうと思った財布のポケットから、一枚の名刺の端が見えた。
「・・・・・・」
思わず、立ち止まってしまう、あたしがそこにいる。
その名刺は、ケイがくれた名刺だった。
あたしの勤める会社から、そんなに遠くない場所にある、ケイのお店。
何故か、少しの間考えこんで・・・・
そのついでに・・・といってはなんだけど、大輔に「出張いってらっしゃい。お土産は生チョコでね~」ってメールを打って、あたしは、意を決して、ケイが店長をしてるお店へと・・・
ほんとに、何で意を決しないといけないのかわからないけど・・・行くことにしてみた。
*
駅からちょっと離れた場所にある、ケイのお店。
正確に言うなら、ケイが店長を努めるお店な訳だけど、時間的にはそろそろ閉店の時間。
あたしは、お店の前まで来て・・・何故か、中に入るのを躊躇った。
なんか・・・
なんというか・・・
あのキスが・・・
頭から離れなくて・・・
気まずいというか・・・
一体、どういうつもりでケイがあんなことしたのか、わからないし・・・
恒例行事とか言ってたけど、何が恒例行事なのか、あたしにはさっぱりわからないし。
ショーウィンドウの前で、もう、ほんとに、泥棒みたいに中を覗き込んでると、あろうことか・・・お店の中から、雑誌みたいにお洒落なスタイルをした男の人が路地の看板を下げに出てきてしまった。
うぅ・・・やばい!
思わず逃げそうになるあたしを見て、その男の人は、お客さんと勘違いしたのか、すごく明るい声で、こう言った。
「まだやってますから、中にどうぞ!ほかのお客さん少なし、ゆっくり見れますよ」
その言葉に、あたしはその場で崩れそうになった。
どんな顔をして振り向こうかと少し考えて、ものすごくぎこちなく笑って、「あ、ありがとう・・・ございます」と答えてしまう。
もう・・・
なにやってんのあたし・・・
馬鹿じゃないの・・・
その時のあたしは、明らかに挙動不審だったと思う。
お店の中は内装がカッコよくて、店内に流れてるBGMは、聞き心地のいいR&B。
雑誌に取り上げられるぐらいだから、売られてる服もお洒落で、ついでに言えば、結構いい値段。
何か買うことになったら、もう、クレジットカードを使うしかないと・・・あたしは、変な覚悟を決めて、お店の中を見て歩いた。
そんなあたしの隣に、さっき、あたしを中に案内してくれた、あの男の人が立つ。
ネームプレートには、『副店長 新城 真人(シンジョウ マナト)』と書いてあった。
あたしと同じぐらいの歳だと思うのに、副店長とか・・・
やっぱり、どこか、世界が違う気がした。
服の値段と世界の違いに、思わず、ため息が・・・
そんなあたしの気持ちに気付いたのかなんなのか、新城さんは、笑いながら冗談ぽくこう言った。
「大丈夫ですよ。カードで分割も、ボーナス払いもできますから」
「あ、あは、あはは・・・・」
あたしは、思わず、ぎこちなく笑ってしまう。
案の定、今日も残業になってしまった。
せめてもの救いは、次の日が土曜日だったってこと。
あんまり長く残業もできないので急ぎの書類だけを作ってから、あたしは、一人で会社を出た。
時計の針は、夜の七時を少し過ぎた時間を差していた。
駅までの人ごみは相変わらずで、疲れて、そんなに早く歩きたくないのに、あたしの足は、人の流れに合わせて自然に早足になる。
大輔にメールを、返しておかないとな・・・
そう思ってバックの中の携帯を手に取ると、財布がストラップに引っかかって、携帯ごと財布も釣れてしまった。
「ああ・・・もぉ・・・」
あたしは、何気なく、携帯のストラップにひっかかった財布を外す。
その時、バックにしまおうと思った財布のポケットから、一枚の名刺の端が見えた。
「・・・・・・」
思わず、立ち止まってしまう、あたしがそこにいる。
その名刺は、ケイがくれた名刺だった。
あたしの勤める会社から、そんなに遠くない場所にある、ケイのお店。
何故か、少しの間考えこんで・・・・
そのついでに・・・といってはなんだけど、大輔に「出張いってらっしゃい。お土産は生チョコでね~」ってメールを打って、あたしは、意を決して、ケイが店長をしてるお店へと・・・
ほんとに、何で意を決しないといけないのかわからないけど・・・行くことにしてみた。
*
駅からちょっと離れた場所にある、ケイのお店。
正確に言うなら、ケイが店長を努めるお店な訳だけど、時間的にはそろそろ閉店の時間。
あたしは、お店の前まで来て・・・何故か、中に入るのを躊躇った。
なんか・・・
なんというか・・・
あのキスが・・・
頭から離れなくて・・・
気まずいというか・・・
一体、どういうつもりでケイがあんなことしたのか、わからないし・・・
恒例行事とか言ってたけど、何が恒例行事なのか、あたしにはさっぱりわからないし。
ショーウィンドウの前で、もう、ほんとに、泥棒みたいに中を覗き込んでると、あろうことか・・・お店の中から、雑誌みたいにお洒落なスタイルをした男の人が路地の看板を下げに出てきてしまった。
うぅ・・・やばい!
思わず逃げそうになるあたしを見て、その男の人は、お客さんと勘違いしたのか、すごく明るい声で、こう言った。
「まだやってますから、中にどうぞ!ほかのお客さん少なし、ゆっくり見れますよ」
その言葉に、あたしはその場で崩れそうになった。
どんな顔をして振り向こうかと少し考えて、ものすごくぎこちなく笑って、「あ、ありがとう・・・ございます」と答えてしまう。
もう・・・
なにやってんのあたし・・・
馬鹿じゃないの・・・
その時のあたしは、明らかに挙動不審だったと思う。
お店の中は内装がカッコよくて、店内に流れてるBGMは、聞き心地のいいR&B。
雑誌に取り上げられるぐらいだから、売られてる服もお洒落で、ついでに言えば、結構いい値段。
何か買うことになったら、もう、クレジットカードを使うしかないと・・・あたしは、変な覚悟を決めて、お店の中を見て歩いた。
そんなあたしの隣に、さっき、あたしを中に案内してくれた、あの男の人が立つ。
ネームプレートには、『副店長 新城 真人(シンジョウ マナト)』と書いてあった。
あたしと同じぐらいの歳だと思うのに、副店長とか・・・
やっぱり、どこか、世界が違う気がした。
服の値段と世界の違いに、思わず、ため息が・・・
そんなあたしの気持ちに気付いたのかなんなのか、新城さんは、笑いながら冗談ぽくこう言った。
「大丈夫ですよ。カードで分割も、ボーナス払いもできますから」
「あ、あは、あはは・・・・」
あたしは、思わず、ぎこちなく笑ってしまう。