BitteR SweeT StrawberrY
そんなことを考えてたあたしに、彩さんはにっこり笑ってこう言った。

「どしたの?深刻な顔して」

「え・・・いえ・・・うーん・・・なんか、みんなすごいなって思って・・・」

「えぇ?」

「このお店のスタッフって、ほんと、色々な経験してるんだなって・・・そう思って。
あたしなんか・・・全然、甘ったれだなって・・・」

「あはは!何いっちゃってるの?もぉ、真面目だなぁ!
はい、メイクできたよ!」

「え?!」

彩さんが、ポーチの中から鏡を取り出して、それをあたしに渡してくれる。
そこに映っていたのは、自分でも、これ誰だろう!?って思うほど、なんだか美人に見えるあたし自身の顔だった。
こんな短時間で、あたしの目の大きさ・・・二倍になってる・・・!?
彩さんは、一人で驚いてるあたしの髪を梳かして束ねると、この間、ケイがやってくれたみたいくるってそれを巻いて、毛先が跳ねるようにしてピンで止める。

「おおお!これでOK!10分で変身終わり!」

彩さんはそう言って、なんだか楽しそうな顔で笑った。
たった10分で、ほんとに、これ誰!?なあたしになってしまって、もう、ほんとに彩さんの職人芸には脱帽だった。

「おお!すごーい!ありがとう!!」

元は平凡な顔なあたしが、すっかり美人さんに化けてしまって、驚いた反面、なんだか嬉しくて、あたしは、思わずそんな声を上げる。
彩さんは「これぐらいならいつでもやったげるよ~」と答えて、にっこり笑うのだった。

このカッコで・・・
今から、ケイとデートとか・・・

そう考えるだけで、あたしは、一人赤面してした。
馬鹿みたいだけど、可愛いって、綺麗だって、ケイがそう思ってくれたなら、あたしはもう、それだけで幸せになれそうって本気でそう思った。

でも、そんな幸福感が、一気に崩れてしまうのは、ここから、ほんの数時間後のことだってことに、あたしは、この時、全然気付いていなかったのだ・・・


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