BitteR SweeT StrawberrY
ケイがいるか・・・どうか・・・

聞いてみようと思うけど、なかなか、それを聞く勇気がない。
レジのところを見ると、高校生ぐらいにしか見えない女の子が一人、真剣な顔で閉店作業をしていた。

「あ・・・すいません、閉店時間・・・ですよね・・・・」

「ああ、いいですよ。お客さんがいる限り、何時まででも開けておきますよ。
それが、うちの店長のポリシーだから」

新城さんは、どこか嬉しそうにそう言って、手元にあったワンピを手に取る。

「この色、お客さんによく似合いますね」

袖口に付いたファーと、シルクのような光沢の生地がとっても可愛い、ピンク色のワンピだった。

「か、可愛い・・・・っ」

デザインの可愛さに思わずそういったけど・・・・こんな綺麗で華やかな色が、あたしに似合うとは思えない。

「もう、商売人だな~・・・・でも、可愛い・・・っ」

「でしょ?ミニだからカジュアルでも着こなせるし、デザインがこんなだから、披露宴とかにも着ていけますよ」

新城さんが、そう言って笑った時、レジにいた女の子が、半べそをかいて、いきなり、どこかに走り出した。
きょとんとして見ているあたしに気付かないまま、その子は、お店の端のほうにある、スタッフオンリーのドアを開けて、そこに飛び込んでいく。

「ケイちゃ~~~~~ん!!!お金があわないよ~~~~!!!!」

フロアにまで聞こえるような、大きな声で、その子は、ケイの名前を呼んだ。

「っ!」

それを聞いていた新城さんが、苦笑いしてあたしに「す、すいません、ちょっと、あの子まだ新人で・・・」と言う。

「いえ!あたし、全然気にしません!そういうの!」

「ほんとすいません」

「大丈夫です!ほんと、気にしないで!」

あたしは、なんだか、急にそわそわして、きょろきょろとお店の中を見回してしまう。

あの子が、ケイを呼んだということは・・・
間違いなく、ケイは、まだこのお店にいる・・・
どうしよう・・・
のこのこ遊びにきちゃったけど・・・
やっぱり・・・
なんか、気まずい・・・

「ああ・・・あの、もう閉店だし、あたし、今日は、帰りま・・・」

新城さんにそういいかけた時。

不意に・・・
ほんとに不意に・・・
後ろから・・・・

「あれ?優子??」

あの日、長い時間あたしと話していたあのハスキーな声があたしを呼んだ。

振り返ると、そこに・・・

あの日と同じ笑顔で、相変わらず男の人みたいなスタイルのケイが立っていた。


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