BitteR SweeT StrawberrY
       *
あたしは今まで、大輔の何を見てたんだろう?
きっと、あれが大輔の本音なんだと思う。
ショックというか・・・
ショックにもならないというか・・・
なんだか、呆れ返ってしまって、涙すら出てこない。

大輔に呆れたのもあるけど、あたしは、あたし自身に、呆れていたのかもしれない。
あの言葉を、どう受け止めればいいのか、どう処理すればいいのか、全くわからないまま、あたしは、ただ呆然とケイの背中を追いかけて、ホテルのエントランスを出た。
春らしくあったかい風が、ふわって、ケイのコートの裾を持ち上げる。
ケイは、海からの夜風の中、ゆっくりとあたしに振り返って、さっきとは打って変わった柔らかな表情で、にこって笑った。

その笑顔に、茫然自失だったあたしは、ハッと我に返る。
ケイは、あたしの手を握ったまま、歩道の方へ歩きながらこんなことを言うのだった。

「あ~・・・久々にキレたな・・・ごめんな」

「え?あ・・・あの、シャンパンじゃーって、あれ?」

「そそ」

「ケイ・・・あたしの代りに・・・怒ってくれたんだ?」

あたしが、無理矢理笑ってそう聞くと、ケイは少しだけ黙って、言葉を続けた。

「・・・・一つ優子に言っておくよ」

「うん?」

「優子はいい女だよ。それはオレが保障する。おまえ、可愛いしな」

「・・・・・・・・」

あたしは、思わず黙って、ぎゅって唇を噛んで、その場に立ちどまってしまう。
ケイは、立ち止まったあたしを振り返って、さらさらの前髪の下から、真っ直ぐにあたしを見つめて、また、にこっと笑うのだった。

その時だった。

不意に、ホテルのエントランスから、誰かの声が聞こえた。

「ちょっと!ちょっと待って!優子ちゃん!!!」

「っ!?」

あたしはびくっと肩を震わせて、恐る恐る後ろを振り返る。
ケイもその声に気付いて、冷静に細めた瞳で、走り寄ってくる声の主を見た。
その声の主は・・・・
他でもない・・・
大輔だった・・・

どうして大輔が追いかけてきたのか・・・あたしにはよく判らない。
謝りにきたんだろうかって、一瞬そう思ったけど、次の瞬間、あたしは、唖然とすることになる。
シャンパンを頭からかぶって、びしょ濡れの大輔は、思い切り眉を吊り上げて、こう言った。

「どういうことなんだよ優子ちゃん!?
つかさ、男連れこんなとこ来てて一体なんなの!?どういうつもりなんだよ!?」

「・・・・・・」

一体、この人は、何を言ってるんだろう?って、あたしは、言葉を失った。
まず、言うことは、そこなんだ・・・・
そういうあなたは、女の子を連れて此処にいたのに・・・
それは棚の上なんだ・・・
そうは思ったけど、あまりにも理屈がおかしすぎて、あたしは、ひたすら、唖然として黙るしかなかった。
すると、あたしの隣にいたケイが、いきなり、あはははって笑うと、こんなことを口にする。

「悪いけど、男じゃないよ・・・女だよ!」

大輔が、え?!って顔をしてケイの綺麗な顔をまじまじと見る。
ぱっと見じゃ、確かに、ケイは、服装も髪型も男の人みたいだけど、よく見れば、絶対に女の人だってわかる。
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