BitteR SweeT StrawberrY
       *
海浜公園のデッキのベンチに座わると、海を挟んだ向こうに側、レインボーブリッジが見える。
デートスポットなだけに、日が沈んでも、結構な人通りがあるみたいだった。
あたしは、膝に頬杖をついて、なんだかぼーっと、イルミネーションの夜景を見てた。
ケイは、ついさっき、「ここで待ってて」ってあたしに言って、ふっとどこかに歩いて行ってしまった。
戻ってくるのはわかってるから、あたしは、素直にここでケイを待つことにした。
夕方まで、あんなに幸せな気分だったのに、なんだか、思い切りヘコんでるあたしが、ここにいる。

大輔が連れていた女の子、大輔がレストランで言ってた言葉・・・
追いかけてきたと思ったら、結局はあんな感じだったし・・・

あたしは、本当に、この3年間・・・一体、大輔の何を見てきたんだろう?
結局あたしは、愛されてたんじゃなくて、色々都合がいいから、取り置きされてただけなんだろうな・・・
恋人ってなんだろう?
彼氏彼女ってなんだろう?
そもそも、そう思ってるあたしだって、本当に大輔のことが、好きだった訳じゃないのかもしれない・・・

『別に嫌いじゃないんだよ、彼女のことはさぁ、だけどつまらん!
まじでつまらん!マグロは嫌だ!
親も結婚しろってうっせーしさ・・・まぁ、譲歩っていうのかな?
うちの彼女、相当鈍いみたいで、嘘言っても全然信じるし、ああいうタイプは金も貯めこんでそうだし、なんか都合もいいからさ。
もし結婚しても、嫌になったら離婚すればいいだけだし・・・』

大輔が言ってたその言葉が、ずっと、あたしの頭の中をぐるぐると回って、割れたガラスの破片が刺さるみたいに、あたしの心をどんどん傷つけていった。
大輔の本音とか本性とか、3年も一緒にいて見抜けなかったあたし。
そんな自分にも腹が立つ。
段々と、あんな言葉で侮辱されたことにも腹が立ってきて、あたしは、ぎゅって唇を噛んだ。
でも、怒りっていう感情だけじゃなくて、悔しさとか失望とか、寂しいとか、自己嫌悪とか、そんな色んな感情がごちゃ混ぜになって、いつの間にか、あたしの目に、一杯の涙がたまっていた。

「あたしって・・・馬鹿かも・・・」

ぽつんって呟いて、あたしは、メイクしてることも気にしないで、片手で目を拭う。
その時、とんって足音がして、あたしがハッと顔を上げると、そこに、柔らかく笑いながら、ケイが立っていた。

「あ・・・おか・・・えり・・・」

あたしは笑おうとしたけど、笑えなくて、ぽろぽろと涙を零したまま、夜景を背景に立つケイを見上げてしまう。
ケイは、何も言わないで、手に持っていケーキ箱をベンチの上に置いた。

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