BitteR SweeT StrawberrY
     *
あたしが泣いてる間、ケイは、ずっと黙って、ただ、あたしの肩を抱いてくれた。
ケイは、女の人だから、きっと、あたしの悔しい気持ちを、わかっていたんだと思う。
髪型も服装も、性格も男っぽいけど、実際には女の人なケイの方が、本物の男である大輔より、きっと、器もスケールも大きいんだ。

人は、人の何を見て好きになるのかな?
男だからとか女だからとか、そんなこと関係なく、その人の持ってる内面に触って初めて、この人のことが好きだって・・・そう思えるのかもしれない。

あたしにとってのケイは、異性であり同性であり、そして、人間としても、恋愛感情を向ける相手としても、すごく好きな人なんだ。
あたしは、どうして迷っていたのかな・・・
あたしは、ほんとに馬鹿だ・・・

海からの風が少し強くなってきた。
やっと泣き止んだあたしは、ケイにもたれかかったまま、膝の上にストロベリータルトを置いて、遠慮なくそれを頬張っていた。

「こんなに食べたら、太っちゃうね」

あたしは、そう言って、えへへって笑って見せる。
せっかくのメイクも、大泣きしたせいでほとんど取れてしまっていた。
マスカラがウォータープルーフでほんとによかったって、そんなことを思うあたしは、やっぱりどこか単純なんだと思う。

「それ4号じゃん?それぐらいなら大丈夫だよ。
オレ昔、7号のケーキ一人で食ったことあるけど、体重とか全然変わらなかったし」

ケイはそう言って、おかしそうに笑った。

「ええ!それはケイだからだよ~~~!
体質的に太らない人いるもん!
あたしは・・・・絶対太るタイプ!」

「そうか?じゃあ、帰ったら体重計ってみるか?」

「むぅ・・・っ」

くすくすと笑って、冗談ぽくそう言ったケイを、あたしは横目で睨んでフォークをくわえたままこう言った。

「絶対いやです!」

ケイは、あははって笑って、拗ねるあたしの髪をふわっと撫ぜててくれる。

「おまえ、ほんと可愛いな?幼児みたい」

「ええ!?それは褒めてるの!?」

「褒めてるって」

にっこり笑ってケイがそう言うから、あたしも思わず釣られて笑ってしまう。
タルトの破片を口に運びながら、あたしは、ちょっとだけ視線を足元に落として、言葉を続けた。

「せっかく・・・連れてきてくれたのに、ごめんね・・・」

「なんで謝るの?」

「だって・・・」

「別に優子は、何も悪いことしてないじゃん?」

「ん・・・でも・・・」

「謝りすぎだっていつも言ってる」

ケイはそう言って、可笑しそうに笑う。

「そ・・・そっか・・・」

あたしは、フォークの先でタルトの苺をつつきながら、話しを続けた。

「あたし・・・馬鹿だなぁって」

「うん?なんで?」

「だって・・・三年も付き合ってて、自分の彼氏が、あんな風にあたしのこと・・・思ってたなんて・・・全然、気付かなかったんだもん」

無理して笑ったあたしを、ケイの瞳が、真っ直ぐに見つめる。
< 139 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop