BitteR SweeT StrawberrY
ケイは、フォークを持ったあたしの手を掴んで、自分の口元に持っていくと、カスタードのついた苺をぱくって口の中に放りこんでしまう。
そんなケイをきょとんと見つめたあたし。
ケイは、唇で小さく笑ってこう言った。

「気付いてなかったのは、あっちだって同じだよ。
優子の性格の良いところとか、可愛いところとか、いくらだって気付く時間はあったはずだよ。ちゃんと、優子っていう人間を見てたなら、あんなクソみたいな台詞、出てこないよ。
それに・・・」

「うん?」

ケイは、悪戯っぽく笑って、あたしの耳元に唇を寄せると、囁くようにこう言った。

「おまえ、裸にすると反応が素直で可愛いし、良い声で色っぽく鳴くしな」

「はぅっ!?」

あたしは、その台詞で一気に顔を赤くして、フォークをくわえたままうつむいてしまう。

「も、もぉ!や、やめてよ・・・っ!
ケイのばかぁ!」

「だって、ほんとのことじゃん。あれのどこがマグロなんだって」

ケイはそう言って、あはははって愉快そうに笑うと、言葉を続けた。

「浮気の定義なんてさ、人それぞれで、二人で飯行っただけでも浮気だって言うやつもいれば、セックスすれば浮気だって言うやつもいる」

「う・・・うん」

「どれを定義にするかは、個人の自由だけど。
オレはね・・・相手の心が、別のやつに移った時が、ほんとの浮気だって思ってる」

「え?やだ、どういう意味?」

「ん?例えば、付き合ってるとするだろ?」

「う、うん」

「で、相手が他の誰かと寝ました。でも『ごめんなさい、単なる出来心です、気持ちは移ってません、基本はおまえだけです』っていうのは可な訳」

「ええええ!?そうなの!?」

「うん、だけどな・・・」

「うん?」

「いわゆる遊び相手の前でな、ちゃんと付き合ってるやつのことを貶したり、馬鹿にしたりするのは、もう、浮気とか浮気じゃないとかそういう問題じゃなくて、人間性の問題だと思う。ルール違反もいいとこだ」

「・・・・・」

「問題は、それを許すか許さないかだ。
これから、もう一度やり直すのか、それとも、きっぱり別れるのかは、もう優子次第。
少なくとも、今まで知らなかった相手の本性が見えた訳だ。
それを知ったんだから、あとは自分がどう動くか・・・
まぁ、主観を言えば・・・オレだったら、あんな男願い下げだけど」

ケイは、冗談ぽくそう言って笑った。
あたしは、ハッとしてケイの顔を見る。

「ん・・・・そうだね。
あたしさ・・・ほんとに勇気なくて、今、大ちゃんと・・・彼氏と喧嘩する元気もない。
でも・・・今ね・・・それ聞いてちょっと思った」

「何を?」

「あたしも・・・・あんな男願い下げだって」

泣いたせいで腫れた顔で、あたしは、えへへって笑って、隣に座ってるケイの顔をじーっって見つめる。
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