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      *
それからしばらくして、あたしと佐野さんは、看護士さんに連れられ、ICUに通してもらった。
医療器械に囲まれたベッドの上で、酸素マスクをして、点滴を打たれているケイ。
その顔色は、まだ良いとは言えないみたいだった。
眠っているのか、ケイは瞼を閉じたまま、少しも動かなくて、なんだか心配になったけど、呼吸がスムーズにできるようになったのか、あたしの目の前で、ゆっくりとその胸が上下してた。

ちゃんと、息してる・・・

あたしは、ほっとして、思い切り体の力が抜けて、すとんってベットの脇の椅子に座ってしまった。
そんなあたしの様子を横目で見て、佐野さんは、何故か可笑しそうに笑った。

「安心したか?ちゃんと生きてるぞ、ケイは」

あたしは、気の抜けた顔をして、思わずえへへって笑ってしまう。

「安心・・・しました・・・よかった・・・」

「うん。じゃあ俺は、マナトに連絡してくるから。ケイのこと、看ててやって」

「はい」

「ああ・・・そういえば、帰らなくていいのか?もう、終電なくなるぞ?」

「大丈夫です・・・ケイが・・・目を覚ますまで・・・いたいんです・・・」

あたしはそう言って、ゆっくりと佐野さんの顔を見上げる。
佐野さんは、唇だけで、もう一度笑った。

「ん・・・そうか。じゃ、よろしくな・・・ちょっと電話かけてくる」

「はい、いってらっしゃい」

佐野さんは、あたしに軽く片手を上げて、ICUを出ていった。
ケイのベットの枕元で、心拍と呼吸を測定する機械が、ピッピッって鳴っている。
その機械の見方なんてわからないけど、きっと、この音が安定してるってことは、ケイの呼吸も安定してるってことなんだと思う。
あたしは、そーっと手を伸ばして、ケイの手を握ってみた。

反応はないけど・・・
あったかい・・・
ちゃんと、生きててくれてる・・・

あたしは、それを確認して、また、泣きそうになったけどそこはぐっと堪えて、ケイの手をぎゅうって握って、そのぬくもりを、ただ、感じていた。
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