BitteR SweeT StrawberrY
*
「おっ、今日はいちゃついてないんか?」
そんな台詞を口にして、佐野さんが、可笑しそうに笑いながら病室に入ってきたのは、それから10分ほど経った時だった。
「お、お疲れさまです!っていうか、なんですかそれ!?」
ケイのベッドの隣で料理本を読んでいたあたしは、思わず顔を赤くして、くすくすと笑っている佐野さんを振り返る。
佐野さんは、軽く片手を上げて、ゆっくりとベッドの脇に立つと、小さく首をかしげて、ケイにこう言った。
「ダルそうな顔してんな?大丈夫か?」
「ダルいよ。でもまぁ・・・仕方ない」
「そうだな・・・仕方ないよな」
佐野さんは唇だけで小さく笑って、あたしの隣の方に、たたんで置いてあった椅子を広げると、それに腰を下ろして、ベッドの端に頬杖をついた。
ケイは、ベッドの上でだるそうにして、自分の片腕を広いおでこに押し当てている、佐野さんは、そんなケイの姿を、すごく優しい視線で、見つめていた。
それを見たあたしは、なんだか、ここに居たらいけないような気がして・・・
急に複雑な心境になって、足元のバックを手にとると、椅子を立ち上がった。
できる限りの笑顔で、あたしは、ケイと佐野さんに向かってこう言う。
「じゃあ、そろそろ面会時間も終るから、あたし、帰りますね!
明日は、流石に仕事にいかないとアレなんで・・・仕事が終わったら、寄るから」
「お疲れ。気をつけて帰れよ」
佐野さんは、そんなあたしに振り返って、軽く片手を上げる。
ケイは、額に当てた腕の隙間からあたしに視線を向けて、唇だけで小さく笑った。
「ありがと・・・優子。今日は変なのに絡まれるな・・・
ああ・・・あと、彼氏と話つけるのに一人じゃ不安なら・・・
まじで、ガクに行ってもらえ。
こいつ、人威圧すんのは得意だから」
「は?なんだそれ?つか、優子、彼氏と別れるのか?」
佐野さんは、椅子に座ったまま、ちょっときょとんとした顔つきをして、まじまじとあたしを見上げた。
あたしは、思わず苦笑してしまう。
「うーん・・・多分、別れると・・・思います・・・」
「そうか・・・まぁ、あれだよ、ほんとに、相手がヤバそうなやつなら、威圧ぐらいしてやんから」
佐野さんはそう言って、物凄く底意地の悪い顔つきでニッて笑った。
そんな佐野さんを横目で見ていたケイが、ぷって吹きだした。
「ああ・・・そういう話聞くとガクは、湘南の元ヤン根性が騒ぐらしいぞ」
「元ヤン言うなよ・・・ちょっとやんちゃだったって言えよ・・・」
佐野さんは、少しふて腐れた顔になって、じーってケイの顔を見る。
あたしは、思い切りぽかーんとして、佐野さんのふて腐れた顔をまじまじと見つめてしまった。
「は!?も・・・元ヤン・・・っ!?」
「あれ?ゾッキーだったっけ?今時、ゾッキーもどうかと思うけど・・・」
ケイは、可笑しそうにくすくす笑ってそう言う。
「どっちも違う!だから、ちょっとやんちゃだっただけだって・・・
ああもう!あれは俺の黒歴史なんだから、暴露すんなよ、こんなとこで!」
バツが悪そうに髪をくしゃくしゃとかき回して、佐野さんは、はぁって大きくため息をつく。
ケイは、可笑しそうにくすくすと笑っている。
あたしも釣られて、思わず笑ってしまった。
「あはは!じゃ、これは危ないと思ったら、連絡しますよ!
あ!あたし、そんな訳で帰りますね!」
あたしは、何も気にしてない素振りでそう言うと、佐野さんが笑顔で答える。
「気をつけてな」
くるっと二人に背中を向けて、あたしは、そそくさと病室を出た。
あたしは、エレベータに向かって特別病棟の廊下を歩きながら、ふうってため息をついてしまう。
なんだか、今日は、あの二人の割って入ったらいけないような気がして、すごく複雑な心境だった。
「おっ、今日はいちゃついてないんか?」
そんな台詞を口にして、佐野さんが、可笑しそうに笑いながら病室に入ってきたのは、それから10分ほど経った時だった。
「お、お疲れさまです!っていうか、なんですかそれ!?」
ケイのベッドの隣で料理本を読んでいたあたしは、思わず顔を赤くして、くすくすと笑っている佐野さんを振り返る。
佐野さんは、軽く片手を上げて、ゆっくりとベッドの脇に立つと、小さく首をかしげて、ケイにこう言った。
「ダルそうな顔してんな?大丈夫か?」
「ダルいよ。でもまぁ・・・仕方ない」
「そうだな・・・仕方ないよな」
佐野さんは唇だけで小さく笑って、あたしの隣の方に、たたんで置いてあった椅子を広げると、それに腰を下ろして、ベッドの端に頬杖をついた。
ケイは、ベッドの上でだるそうにして、自分の片腕を広いおでこに押し当てている、佐野さんは、そんなケイの姿を、すごく優しい視線で、見つめていた。
それを見たあたしは、なんだか、ここに居たらいけないような気がして・・・
急に複雑な心境になって、足元のバックを手にとると、椅子を立ち上がった。
できる限りの笑顔で、あたしは、ケイと佐野さんに向かってこう言う。
「じゃあ、そろそろ面会時間も終るから、あたし、帰りますね!
明日は、流石に仕事にいかないとアレなんで・・・仕事が終わったら、寄るから」
「お疲れ。気をつけて帰れよ」
佐野さんは、そんなあたしに振り返って、軽く片手を上げる。
ケイは、額に当てた腕の隙間からあたしに視線を向けて、唇だけで小さく笑った。
「ありがと・・・優子。今日は変なのに絡まれるな・・・
ああ・・・あと、彼氏と話つけるのに一人じゃ不安なら・・・
まじで、ガクに行ってもらえ。
こいつ、人威圧すんのは得意だから」
「は?なんだそれ?つか、優子、彼氏と別れるのか?」
佐野さんは、椅子に座ったまま、ちょっときょとんとした顔つきをして、まじまじとあたしを見上げた。
あたしは、思わず苦笑してしまう。
「うーん・・・多分、別れると・・・思います・・・」
「そうか・・・まぁ、あれだよ、ほんとに、相手がヤバそうなやつなら、威圧ぐらいしてやんから」
佐野さんはそう言って、物凄く底意地の悪い顔つきでニッて笑った。
そんな佐野さんを横目で見ていたケイが、ぷって吹きだした。
「ああ・・・そういう話聞くとガクは、湘南の元ヤン根性が騒ぐらしいぞ」
「元ヤン言うなよ・・・ちょっとやんちゃだったって言えよ・・・」
佐野さんは、少しふて腐れた顔になって、じーってケイの顔を見る。
あたしは、思い切りぽかーんとして、佐野さんのふて腐れた顔をまじまじと見つめてしまった。
「は!?も・・・元ヤン・・・っ!?」
「あれ?ゾッキーだったっけ?今時、ゾッキーもどうかと思うけど・・・」
ケイは、可笑しそうにくすくす笑ってそう言う。
「どっちも違う!だから、ちょっとやんちゃだっただけだって・・・
ああもう!あれは俺の黒歴史なんだから、暴露すんなよ、こんなとこで!」
バツが悪そうに髪をくしゃくしゃとかき回して、佐野さんは、はぁって大きくため息をつく。
ケイは、可笑しそうにくすくすと笑っている。
あたしも釣られて、思わず笑ってしまった。
「あはは!じゃ、これは危ないと思ったら、連絡しますよ!
あ!あたし、そんな訳で帰りますね!」
あたしは、何も気にしてない素振りでそう言うと、佐野さんが笑顔で答える。
「気をつけてな」
くるっと二人に背中を向けて、あたしは、そそくさと病室を出た。
あたしは、エレベータに向かって特別病棟の廊下を歩きながら、ふうってため息をついてしまう。
なんだか、今日は、あの二人の割って入ったらいけないような気がして、すごく複雑な心境だった。