BitteR SweeT StrawberrY
平凡な人生をどこかで嫌だなって思いながら、結局、両親とか彼氏とか友達とか、自分以外の人が、それをどう思うか気にして、こうしたい!って言えないとこはあったかもしれない。
あたしには、自分の意思っていうのもが、足りないのかもしれない。

「どした?」

急に黙ったもんだから、ケイは、不思議そうな顔してあたしの顔を覗きこんでくる。

「あ!いえ・・・なんでも、ないです。うん、ケイさんの言うことは、当たってるなって・・・そう思ったから・・・」

「優子」

「え?はい?」

「さん付け、やめようよ」

「え?」

「友達に敬称入れられるほど、偉くないしさ、オレ。優子はもう知り合いだから、いいよ、ケイで」

「え!?だって!ほら、ケイさん年上だし・・・そんなん失礼だし・・・」

「だから、それがダメだって言ってんの。年上とか年下とか関係ないし。職場も違うし。友達に『さん』とかいらない」

「っ・・・そ、そうです・・・・か??」

「うん。いらないよ」

「でも・・・っ」

「それ以上言うとキスするぞ?」

思い切りからかうようにそう言って、ケイはわざと顔を近づけてくる。

「ぶ・・・っ!なに言っちゃってんですか!!」

あたしは、自分の顔が一気に赤くなるのを感じて、ハッとそんなケイから顔を逸らす。
もう、ほんとに、馬鹿じゃないのあたし!
この人は、男の人みたいだけど女の人なんだから、こんなに照れなくなっていいのに!と、自分に言い聞かせるけど、心臓のばくばくは止まらない。
そんなあたしの動揺を知ってるのか、ケイは面白がってわざとあたしの肩を抱く。

「ちょ!なにやっちゃってんですか!もう、女同士の怪しいカップルと思われますよ!」

「思われないよ。後ろから見れば、まるっきり男だもん、オレ」

「いや、確かにそうかもしれないけど!」

「そんなに嫌なん?」

「え!?ななな、なにが・・・ですか!?」

「酔っ払ってるからな~・・・優子は初心で可愛いし、イタズラでもするかな」

「イタズラってなんですか!?」

慌てふためくあたしなんかお構いなしに、ケイは、酔っ払いだからかなんなのか、いきなり、あたしの耳に唇を近づけて、耳たぶを甘噛みする。

「ひっ・・・!うぅ・・・っ」

あたしは奇声を上げて、思い切り硬直してしまう。

「面白いな・・・雛乃だってそんな反応しないのに。どこの中学生だよ」
ケイは、愉快でたまらないって感じでそう言うと、耳元でくすくす笑いだす。

「な!?雛乃ちゃんにもこんなことするんですか!?は、犯罪・・・ですよ!」

「優子は成人してるから、犯罪にはならないな、確かに」

「そういう意味じゃなくて!」

ムキになってそう叫んだあたしの顎を、ケイの指が掴み上げる。

「うっ・・・な、なんですか・・・っ?」

「優子をからかうの面白いから、少しエスカレートしてみようかな・・・」

「なにを言っちゃってるんですか!?」

「面白いから、今日も拉致な」

「はい????」

ケイはきょとんとするあたしの手を掴んで、早足で自分のマンションへと向かっていく。
あたしはじたばたしたまま、そんなケイに引きずられて、後をついていくしかできなかった。

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