BitteR SweeT StrawberrY
   *
あたしが、ケイの病院を出たのは、8時近くになってからだった。
今日は仕事が忙しいのか、佐野さんは、あたしが病院にいる間に姿を見せなかった。
ケイの携帯には、「今夜は遅くなる」ってメールが来ていたらしい。
ケイはあたしを特別だと言ってくれた、でも、ケイは、まだ迷っている。
それが判っているから、嬉しいような切ないような、そんな複雑な心境だった。
でも・・・
あたしが、ケイを好きなことには変わりない・・・
だから、どんなに複雑でも、とにかく今は、あたしは慌てず騒がずを基本にしようって、心の中で、自分にそう言い聞かせながら、あたしは、家に帰る路地を歩いていた。
そろそろ、マンションの影が左側に見える頃。
あたしは、「家に帰ったよ」ってメールをケイに入れようと思って、何気なく、バックの中から、携帯を手に取った。
すると、メール着信を知らせるアイコンが点滅してる。
バイブにしてたから、全然気付かなかった・・・
携帯を開いてみると、着ていたメールは二件。
一件は・・・美保からだった。

『優ちゃん、インフルだったんだって?!
大丈夫???この時期にインフルとか不意打ち過ぎだよね(´;ェ;`)
気をつけてよぉ~~(/TДT)/
あ・・・それと・・・ねぇねぇ、今度また、ジェイドくんに会いにいってもいいかな?
優ちゃん、週末だよね?バイト?
明日も行くのかな?
遊びにいっていい!?(≧∇≦)♪』

なんだか気の抜けるようなその文面に、あたしは思わず吹きだしてしまう。

「もぉ・・・美保はのんきでいいなぁ・・・」

思わずそう呟いて、あたしは、躊躇わずに返信ボタンを押す。

『お疲れさま~
そだね~インフルは・・・まぁ・・・確かに不意打ちだったかも(^_^;)
明日もバイトだけど・・・ジェイドくんはいないよ~
今ね~ちょっと体調崩して、おやすみ中なんだ、残念 (笑)
遊びにくるのは全然OKだよ。明日もいると思うから、いつでもどうぞ!』

そう書いて、送信ボタンを押す。
それから、もう一件のメールを開くと・・・・その送信者は、またしても、大輔だった。

『ごめん、ほんとにごめん、ただの気の迷いっていうか・・・なんて言うか・・・
とにかく、一度でいいから、話、聞いてくれないかな?』

「・・・・・・」

それを見た瞬間、あたしは、正直、しつこいって思った。
あたしに対して、あんなことを言っておきながら、一体何を考えて、こんなメールをよこすんだろう・・・
あたしは、なんだか、ものすごく腹が立ってきて、パチンって携帯を閉じると、思い切りそれをバックの中に放りこんだ。

「一体・・・なんなの!」

あたしは、はぁってため息を吐いて、マンションのエントランスに向かって歩いていった。
でも・・・
その次の瞬間・・・

あたしは、思わず、足を止めてしまう。
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