BitteR SweeT StrawberrY
            *
ケイの部屋には、何故かストロベリーの香りが広がっていた。
キッチンカウンターにおきっぱなしの、大粒苺のせいらしい。
ケイは、玄関を開けると、そのまま、倒れこむようにふかふかのカーペットに横になってしまう。

「ちょっと!ケイさん!いきなり寝ないでくださいよ!」

あたしは、そんなケイを立ったままみおろして、未だにばくばくしてる心臓を落ち着かせるように、大きく深呼吸する。
ケイは、うっすらと開いた瞳で見上げると、何故か、思惑でもあるかのように、唇だけで笑ったのだった。

「優子」

「はい!?」

「今・・・さん付けしたろ?」

「もぉっ!」

あたしは、なんだか呆れてしまって、そんなケイの隣に座りこむ。
その時、ゆっくりと目を閉じたケイの頬が青ざめていて、あたしは、ハッとした。
顔色が・・・悪い?
飲みすぎなのかな???

「ケイさん・・・具合悪いですか?なんか顔色悪いですよ・・・」

「ペナルティ2だな」

ケイはそう言うと、いきなりむくっと起き上がって、あたしの肩を掴む。

「えっ!?」

びっくりして固まったあたしの目の前に、また、この間のように、ケイの綺麗な唇が近づいてきた。

「ちょ・・・っ!!」

あたしには、逃げる間もなかった。
苺を練りこんだ生クリームみたいに柔らかいケイの唇は、あたしの唇を塞いでしまう。

「っぅう」

男の人とは違う、ほんとに柔らかな唇。
その隙間から、お酒と煙草のほろ苦い香りのする舌が、いきなり、あたしの口の中に入ってきて、あたしは、またしても硬直してしまう。

これはない!
絶対にない!
酔っ払いにも程っていうのもがある!
だけど・・・
女の子の舌はストロベリーの味がする・・・そう言ってたケイの言葉が、あたしの頭の中に浮かんでしまった。
あったかくて柔らかいケイの舌。
それはなんだか麻薬みたいに、あたしの思考を侵食してしまう。
今まで・・・こんな甘いキスはしたことがない、ってそんなことを思ってしまうぐらい、気持ちがよくて。
あたしにはどうすることもできなくなっていた。

「っうぅ・・・ふ・・・っ」

一瞬、唇が離れた時、ケイはおかしそうに笑っていた。
あたしは、もう、訳がわからなくなって、火がでるぐらい顔を赤くして、思わず叫んでしまった。

「ケイさん!!!もう!ふざけるのもいい加減にしてください!!!!酔っ払うにも程ってものが!!!!!!」

「時々さ」

「はい!?」

「人肌って恋しくならない?」

「はぁ!?」

「男でも女でもいいから、なんか、あったまりたいなって、思うことない?」

「ななな、何を言ってるんですか・・・っ!そ、そんなこと、思いませんよ!」

「優子は淡白だな・・・」

「何か関係あるんですか!?」

「あるよ」

「どのあたりが!?」

「恋愛してきた数と情熱っていうのは、比例するってこと」

「もおおおお!!訳わかんない!!なんですかそれ!?」

「優子は、きっと、もうこいつしかいないっていう恋愛、したことないだろ?」

「え・・・・っ」

「オレはね・・・男でも女でも愛せる人だよ」

「な、なんですかいきなり!」

「そういうレベルに達するぐらいの恋愛は、してきたってことかな」

「あの・・・なんでこの状況でそんなこと言うのか、すっごく意味不明なんですけど・・・っ?!」

「いいよわからなくて」

そう言ってケイは、笑った。
< 17 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop