BitteR SweeT StrawberrY
それを聞いた大輔の顔が、一瞬で青くなったのは、やっぱり、そういうことだったんだ・・・
あたしは、なんだか物凄く複雑な心境になって、携帯を耳に当てたまま、思い切りため息をついてしまった。

本当に、あたしは、大輔の何を見てたんだろう。
この3年間。
大輔と付き合ってきたこの3年間は・・・
一体・・・
なんの意味があったんだろう。

あたしの周りの人も、大輔と結婚するのが一番良いって言ってたはずなのに、結局それは、大きな間違いで、もし、気付かないまま、結婚してたら、幸せどころか・・・
あたしの人生は、めちゃくちゃになっていたかもしれない・・・
周りの意見が、全て正しいってことじゃないんだ・・・

いつだったか、ケイが言ってた「常識なんてすぐにひっくり返るもんだ」って。
今、正にそれを実感してるあたしがいる。
何が正しくて、何が正しくないのかなんて、ほんとに、よく自分で考えないと、とんでもない選択肢を選んでしまうことになるのかもしれない。
あたしは、周りに流されて生きてきたけど・・・
本当に、もう、そんな人生は、いい加減、卒業したいよね・・・

電話を握ったまま、無言になったあたし。
そんなあたしに、電話の向こうで美保が言う。

「優ちゃん?どうしたの?大丈夫?」

「え!あ・・・うん、大丈夫だよ」

「多分さ、警察沙汰になると思うからさ・・・優ちゃん、気をつけたほうがいいよ、ほんとに。万が一さ、村木さんから連絡とあって、匿ってくれって言われても、絶対、匿ったりしたらダメだよ!ちゃんと警察とかに言わないと!」

「うん。大丈夫だよ、それは・・・
結局さ・・・」

「うん?」

「大ちゃんは、なんであたしに、プロポーズなんかしたんだろ?自分でこんな状況作っておきながらさ・・・」

「うーん・・・・あれだよね・・・きっと、使い込んだお金を穴埋めしたいから・・・
優ちゃんとか、優ちゃんのご両親とかにさ・・・なにか理由つけて、お金とか、出してもらいたかったのかもね・・・
婚約したり、結婚するとさ、ある意味では近親者は家族同然になるから・・・
そういうのも許されるというか・・・そんな安易なこと思ったんじゃないの?」

美保は、ちょっとだけ気の毒そうな声であたしにそう言った。
あたしは、そんな美保の言葉に、変に納得してしまったのだ。

「ああ・・・確かに、それは・・・あるかもしれないね・・・」

「うん。だからさ・・・なんていうか、人は見かけによらないよね。
このタイミングでさ、優ちゃんに好きな人が出来たのって・・・
ほんと、よかったのかもしれないよ」

「・・・・うん、そうだね・・・あたしも、そう思う」

「うん。上手くいくといいね~例の人と」

電話の向こうで、美保が、なんだか嬉しそうに笑った。
きっと、美保の頭の中では、あたしの好きな人=佐野さん になってるんだと思う。
でも、実は、その相手というのはケイなんだよ・・・なんて、まだ、美保には言えなかった。

あたしの常識なんて、ほんとに、ちっちゃなもので、今まで普通だと思ってたことも、実は普通じゃなかったって気付いたりして・・・
あたしの世界は、なんだか、ケイと知り合ってから、どんどん、どんどん、急激に変化していったように思える。
あの日、酔っ払いに絡まれたあたしを助けてくれたケイ。
なんの取り得もない平凡なこのあたしを、プレゼントに思えたって、ケイは言ってくれた。
でも、むしろ、ケイとの出会いは、世間知らずだったあたしへのプレゼントなんじゃないかって、そう思った。


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