BitteR SweeT StrawberrY
*
降って沸いたような有給休暇を、上司直々に提案されたあたし。
あたしは結局、そこからまた、会社を休む羽目になった。
あまり気分はよくないけど・・・
それでも、今日は、ケイが退院してくる日だ。
午前中で仕事を切り上げたあたしは、マンションまで戻る途中で、とりあえず、佐野さんの携帯に電話をかけてみた。
3コールほど鳴って、通話という文字がディスプレイに流れる。
「あ、もしもし?佐野さんですか?」
そう聞いたあたしの耳に、なんだか、おかしそうにくすくすと笑う声が聞こえてくる。
あたしは、きょとんとして、また、「もしもし?」って声かけた。
「違うよ、ケイだよ」
「はぅ!」
「おつかれ」
何故か電話に出たのはケイで、電話の向こうのケイは、なんだか可笑しそうに笑っていた。
ケイの声を聞いたら、急にほっとしてしまって、あたしは、携帯を握ったまま、笑ってしまう。
「おつかれさま~!もう戻ったの?」
「うん。もう部屋にいるよ。どうした?」
「ん・・・・あのね・・・・ちょっと、事情があって・・・会社、早く返されちゃった」
「んー?」
「帰ったら・・・話すよ。もうマンション着くから。荷物取って、そっちいくね」
「あ~・・・わかったよ。待ってるよ。おまえ、昼飯は?」
「ん?まだ・・・かな?」
「そっか、じゃ、丁度いいよ。今ガクが、なんか買いにいくって出かけたとこだから、一緒に食えばいいよ。あいつ、携帯忘れてってさ」
ケイはそう言って、くすくすと可笑しそうに笑う。
元気そうなケイの声を聞いたら、沈んでいたあたしの心も、少し浮上してきたみたいだった。
微妙に悲惨な状況になってるけど、この有休の間中、ケイと一緒にいられると思えば、実はすごくラッキーだったのかなって、変に前向きになってしまう。
「はーい!じゃ、すぐ行くね!」
あたしはそう言って、電話を切ると、ダッシュで自分の部屋に戻って、そのまま、ケイの部屋へと急いだのだった。
*
「ガク・・・これ、買いすぎじゃないの?」
ケイは、テーブルの上に並んだ料理の数々を眺めながら、呆れたようにそう言った。
あたしは、そんなケイの隣でぽかーんとしてしまう。
ピザに、オードブルに、サンドイッチに、お寿司におにぎりと、二種類のサラダ、ついでにコーンスープ。
それと、山盛りの苺と、ぎっしりとフルーツが詰まったパウンドケーキに、ドーナツ。
いくらなんでも、三人で食べるには多すぎる料理を並べながら、何故か、佐野さんは可笑しそうに笑っていた。
「いや、どうせさ、『StrengeBerry』の連中も来るからさ、これぐらい買っておかないとと、思ってさ」
「え?」
「え?」
ケイとあたしは思わず顔を見合わせると、佐野さんに振り返る。
佐野さんは、腰に手を当てた姿勢で、小さく首をかしげると、得意気ににまって笑った。
「マナトがみんな連れて、そろそろ来るよ。まぁ、ささやかに快気祝ってやつ?」
「快気って・・・まぁ、治った訳じゃないけど、ある意味確かに快気だな」
ケイはそう言ってくすくすと笑った。
確かに、ケイの病気は治った訳ではないけど、無事に退院できたことは喜ばしいことで、お店のみんなも心配してたから、それで気を利かせた佐野さんが、みんなに声をかけたんだなって、あたしはそう思った。
大輔の一件で、ものすごく嫌な思いをして、へこんでたあたしだけど、こうやって、隣で笑ってるケイを見てると、なんだか、そんな嫌な気持ちなんかどこかに飛んで行ってしまうんだから、すごく不思議。
とりあえず、コーヒーでもって言って、佐野さんがコーヒーを煎れてくれる。
新城さんも、洗い物とかしててマメだと思ったけど、佐野さんもマメだなって感心して、あたしは、カーペットの上に座りこんだ。
「それで・・・優子はなんで今日、午前中上がりだったん?」
何の気もなくそんなことを聞きながら、ケイが、唇だけで小さく笑って、あたしの隣に腰を下ろす。
あたしは、思わず苦笑すると、手元にあったクッションを取って、それを抱えながら、ふぅってため息をついた。
「うんと・・・あれだよ・・・大ちゃんの、ことで・・・
なんか、マスコミの人が、あたしに話しとか聞きたいらしく、会社とかに電話かけてきて・・・それで、上司に、しばらく有給とれって言われちゃってさ」
あたしがそう言うと、ケイは、ちょっと難しい顔をして、うーんって唸った。
降って沸いたような有給休暇を、上司直々に提案されたあたし。
あたしは結局、そこからまた、会社を休む羽目になった。
あまり気分はよくないけど・・・
それでも、今日は、ケイが退院してくる日だ。
午前中で仕事を切り上げたあたしは、マンションまで戻る途中で、とりあえず、佐野さんの携帯に電話をかけてみた。
3コールほど鳴って、通話という文字がディスプレイに流れる。
「あ、もしもし?佐野さんですか?」
そう聞いたあたしの耳に、なんだか、おかしそうにくすくすと笑う声が聞こえてくる。
あたしは、きょとんとして、また、「もしもし?」って声かけた。
「違うよ、ケイだよ」
「はぅ!」
「おつかれ」
何故か電話に出たのはケイで、電話の向こうのケイは、なんだか可笑しそうに笑っていた。
ケイの声を聞いたら、急にほっとしてしまって、あたしは、携帯を握ったまま、笑ってしまう。
「おつかれさま~!もう戻ったの?」
「うん。もう部屋にいるよ。どうした?」
「ん・・・・あのね・・・・ちょっと、事情があって・・・会社、早く返されちゃった」
「んー?」
「帰ったら・・・話すよ。もうマンション着くから。荷物取って、そっちいくね」
「あ~・・・わかったよ。待ってるよ。おまえ、昼飯は?」
「ん?まだ・・・かな?」
「そっか、じゃ、丁度いいよ。今ガクが、なんか買いにいくって出かけたとこだから、一緒に食えばいいよ。あいつ、携帯忘れてってさ」
ケイはそう言って、くすくすと可笑しそうに笑う。
元気そうなケイの声を聞いたら、沈んでいたあたしの心も、少し浮上してきたみたいだった。
微妙に悲惨な状況になってるけど、この有休の間中、ケイと一緒にいられると思えば、実はすごくラッキーだったのかなって、変に前向きになってしまう。
「はーい!じゃ、すぐ行くね!」
あたしはそう言って、電話を切ると、ダッシュで自分の部屋に戻って、そのまま、ケイの部屋へと急いだのだった。
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「ガク・・・これ、買いすぎじゃないの?」
ケイは、テーブルの上に並んだ料理の数々を眺めながら、呆れたようにそう言った。
あたしは、そんなケイの隣でぽかーんとしてしまう。
ピザに、オードブルに、サンドイッチに、お寿司におにぎりと、二種類のサラダ、ついでにコーンスープ。
それと、山盛りの苺と、ぎっしりとフルーツが詰まったパウンドケーキに、ドーナツ。
いくらなんでも、三人で食べるには多すぎる料理を並べながら、何故か、佐野さんは可笑しそうに笑っていた。
「いや、どうせさ、『StrengeBerry』の連中も来るからさ、これぐらい買っておかないとと、思ってさ」
「え?」
「え?」
ケイとあたしは思わず顔を見合わせると、佐野さんに振り返る。
佐野さんは、腰に手を当てた姿勢で、小さく首をかしげると、得意気ににまって笑った。
「マナトがみんな連れて、そろそろ来るよ。まぁ、ささやかに快気祝ってやつ?」
「快気って・・・まぁ、治った訳じゃないけど、ある意味確かに快気だな」
ケイはそう言ってくすくすと笑った。
確かに、ケイの病気は治った訳ではないけど、無事に退院できたことは喜ばしいことで、お店のみんなも心配してたから、それで気を利かせた佐野さんが、みんなに声をかけたんだなって、あたしはそう思った。
大輔の一件で、ものすごく嫌な思いをして、へこんでたあたしだけど、こうやって、隣で笑ってるケイを見てると、なんだか、そんな嫌な気持ちなんかどこかに飛んで行ってしまうんだから、すごく不思議。
とりあえず、コーヒーでもって言って、佐野さんがコーヒーを煎れてくれる。
新城さんも、洗い物とかしててマメだと思ったけど、佐野さんもマメだなって感心して、あたしは、カーペットの上に座りこんだ。
「それで・・・優子はなんで今日、午前中上がりだったん?」
何の気もなくそんなことを聞きながら、ケイが、唇だけで小さく笑って、あたしの隣に腰を下ろす。
あたしは、思わず苦笑すると、手元にあったクッションを取って、それを抱えながら、ふぅってため息をついた。
「うんと・・・あれだよ・・・大ちゃんの、ことで・・・
なんか、マスコミの人が、あたしに話しとか聞きたいらしく、会社とかに電話かけてきて・・・それで、上司に、しばらく有給とれって言われちゃってさ」
あたしがそう言うと、ケイは、ちょっと難しい顔をして、うーんって唸った。