BitteR SweeT StrawberrY
そして、おもむろにあたしに向かって手を伸ばすと、猫でも撫でるように頬を撫でる。
この時のあたしは、もう、頭の中がパニック状態で、その場を逃げ出さないだけ偉いって、自分を褒めてあげたいぐらいだった。
そんなあたしの目の中で、ケイの微笑が、不意に、寂しそうな微笑に変わって、あたしは、ハッとする。

「・・・・ケイ・・・さん?どうしたの・・・?」

「なんでもないよ・・・」

ケイはそう答えてあたしから手を離すと、倒れるように、またカーペットの上に寝転んでしまう。
急に心配になって、あたしは、そんなケイの顔を覗き込んでしまった。
やっぱり、顔色が悪い。

「大丈夫?気分悪いんでしょ?毛布とか取ってきてあげようか?どこにあるの?」

目をつぶったまま、ケイはあたしに言った。

「優子、手・・・」

「え???手??」

あたしが手を伸ばす間もなく、ケイの手があたしの手を握った。
そんなケイの手は、びくっとするぐらい冷たくて、あたしは、思わずその掌を握り返す。

「オレが寝たら帰っていいよ・・・・それまでこうやってて」

「え????」

「こういうときは、男の手より女の手の方がいいんだ・・・柔らかくて」

「・・・・・・・」

この時に、ケイに一体何が起こっていたのか、あたしにはわからなかった。
だけど、無償に心配になって、あたしは、ぎゅうっとケイの手を握ってしまう。

触ってみたくなるほどのサラサラの髪。
ちょっとだけ勇気を出して、あたしは、ケイの髪を撫でみた。
ケイは前髪の下でちょっとだけ目を開けて、小さな声で「ありがとう」って、あたしに言った。
その声を聞いて、あたしの胸は、急に締め付けられるように痛くなる。

「・・・大丈夫?」

ケイは何も答えないで、小さく頷いただけだった。

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