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「ああ・・・ありがちだな。昨日のニュースでもやってたしな」

「うん」

「それなりに名のある会社の人間だから、面白がって報道されても・・・まぁ、仕方ないと言えば、仕方ないのかも」

ケイがそう言ったとき、丁度コーヒーのマグカップを持った佐野さんが、あたしとケイにそれを差し出しながら、話に割り込んでくる。

「事実をどれだけ湾曲して面白可笑しく書くか、それが連中の仕事だからな」
佐野さんはそう言って笑った。
あたしは、マグカップを受け取りながら、むぅってほっぺを膨らませてしまう。

「もぉ、佐野さん!笑い事じゃないよ!あたし、会社で変な噂立てられてるみたいで、すっごい迷惑してるんだから!」

「ああ、そかそか、ごめんごめん」

さして悪いとも思ってなさそうに、佐野さんはそう答えて、テーブルの椅子に腰を下ろす。
そんな佐野さんをちらっと横目で見たケイが、唇だけで笑いながらこう言った。

「どこにでもいるんだよ、変な噂立てたがる連中が・・・でも、別に、優子は何も関係ないんだし、ほっとけばいいよ。
言いたいやつには言わせておけばいい、優子は堂々としときな」

「うん・・・そうだね・・・何にも悪いことしてないしね」

「うん」

ケイがうなづくと、言葉の後ろを続けるように、佐野さんが言う。

「噂なんか、すぐになかったことになるからな。強制有給でもいいんじゃん?
得したと思って、ゆっくりしとけ」

「ですよね~・・・ほんとそう思わないと・・・やってられないです」

そう言って、あたしがコーヒーを一口飲んだ時、ふと、佐野さんがケイを振り返って、なんだか可笑しそうに笑いながらこう言った。

「おまえも一時期、追っかけられたしなぁ?その筋の連中に?まぁ、マイナス要因で追っかけられた訳じゃないけどな」

ケイは、ちらっとだけそんな佐野さんに目を向けると、どこか呆れたような顔になって、ふぅってため息をつく。

「ああ・・・そういうこともあったな・・・そういえば」

「あったよな」

「うん・・・うざかった・・・」

その会話を聞いて、あたしはきょとんとすると、思わず二人に聞いてしまう。

「え?なんでですか?なんでケイが、マスコミの人に・・・」

あたしを振り返った佐野さんが、なんだかにやって笑って椅子を立つと、マグカップを片手に、本棚のところへ・・・
ケイは、そんな佐野さんの背中をじろって睨んでこう言った。

「おーい・・・余計もの出してくるなよ・・・」

「いいだろ別に?優子なら?」

くすくすと笑いながらそう言った佐野さん。

「え?????」

あたしは、訳がわからなくてますますきょとんとしてしまう。
佐野さんは、本棚の一番下の段から雑誌を取り出して、それを持ってまた椅子に腰を下ろす。
マグカップをテーブルに置いて、ニヤって笑う佐野さん。
ケイは、ふて腐れたようにコーヒーを飲んでる。

あたしはきょとんとして、そんな二人の顔を交互に見つめてしまった。
佐野さんが持ってきた雑誌は、有名なファッション雑誌の日本語版。
それをぱらってめくって、あるページを開く。
そして、佐野さんは可笑しそうにくすくすと笑いながらこんなことを言った。

「はい、これは一体誰でしょう・・・?」

「んー?????」

そのページには、モードっぽいチョコレート色の服を着た、綺麗なモデルさんがポーズを取って写っている・・・
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