BitteR SweeT StrawberrY
【19】~ver~ 
この世の中には、沢山の人がいて、それぞれに人生があって、それぞれ悩みを抱えて、みんな生きているんだと思う。
もしかすると、あたしの辛さや切なさなんか、実は大したことないのかもしれな
い。

あたしなんかより・・・
ずっとケイの方が辛いに決まってるから・・・
だから、あたしは、泣いたらいけないんだ・・・

そんなことを思いながら、いつの間にか、ケイと一緒に寝てしまっていたあたし。
あたしが目が覚めた時、目の前にいたはずのケイは、そこにいなくて、気付いたら、あたしの体には、ケイがかけてたはずの毛布がかけられていた。

バスルームの方から、シャワーを使う音が聞こえている。
あたしはハッとして、その場で起き上がった。
時間を見ると、もう8時。
どうやらケイは、今、お風呂に入っているらしい。
あたしは、立ち上がって、ケイがお風呂から出てきたら飲めるように、スポーツドリンクを用意することにした。

「ケイが出たら、あたしもお風呂に入らないと・・・!」

そんな独り言を言いながら、あたしは、グラスに氷を入れて、それにスポーツドリンクを注ぐ。
お風呂の方から聞こえていた、シャワーの音が止まり、がちゃってドアが開く音がした。

我ながら、ナイスなタイミングだ!
あたしはそう思って、えへへって笑ってしまった。
少ししてから、バスルームのドアが開閉する音がして、バスローブの姿のケイが、タオルで髪を乾かしながら、リビングに入ってきた。
キッチンから、ドリンクと、小皿に移し変えた苺を持って出ていくあたし。
そんなあたしに気付いて、ケイはきょとんとした顔をする。

「優子・・・?なんだ、起きてたのか?」

「うん、今起きたとこ」

あたしはそう答えて、にっこり笑ってみせると、テーブルの上にグラスと小皿を置いて、お風呂上りのケイに振り返った。
ケイは、唇だけで小さく笑うと、ゆっくりとした歩調でテーブルまできて、椅子に腰を下ろす。

「一人で片付けしたのか?起きたら綺麗になってたから・・・」

「平気だよ、それぐらい!2~3日、居候させてもらう訳だから、片付けぐらいやるよ」

あたしは、ケイの隣に座りながら、そう言って、タオルを頭からかぶっているケイの顔をじーって見た。
可笑しそうにくすくすと笑って、ケイは言う。

「しばらく居ればいいじゃん。意味不明にマスコミに追っかけられるのも嫌だろ?」

「うーん・・・そうだけど・・・ケイに、悪いから・・・色々、迷惑かけるかもしれないし・・」

そう答えて、ちょっとうつむいたあたし。
ケイは、そんなあたしの髪をふわっと撫でて、柔らかく微笑みながら言うのだった。

「迷惑だったら、最初から来いなんて言わないよ・・・むしろ・・・」

「うん?」

「居てもらったほうが、いい」

そんな言葉を口にしたケイの唇が、どこか切なそうに笑った。
その笑顔を見て、あたしはハッとする。
もしかしたら・・・と、あたしは思う。

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