BitteR SｗeeT StrawberrY

ケイは・・・
今、この時期に一人でいるのが・・・
不安なのかもしれない・・・
うん、そうだよね・・・
もし、あたしが、ケイと同じ立場でも、きっと、不安で・・・
そして、きっと・・・
怖いと思う・・・
薬が効かなければ、癌は、どんどん、ケイの体で広がっていく。
大きく広がっていく度に、ケイの寿命は、短くなっていく・・・
怖くないはずが、ないよね・・・
誰だって・・・
死ぬのは・・・
怖い・・・

あたしは、できる限りの笑顔を作って、こう言った。

「え～・・・じゃあ、ちゃんと食費とか入れさせてね。居させてもらう間の家賃も、ちゃんと払うからさ」

「いいよ、家賃は。自分の部屋の家賃も払わないといけないわけだし・・・うちに引っ越してきたいなら、あれだけど」

ケイはそう答えて、くすくすと笑うと、スポーツドリンクのグラスに手を伸ばす。

「ええ！？ひ、引っ越すって・・・」

あたしは、思わず顔を赤くして、まじまじとケイの綺麗な顔を見る。
可笑しそうに瞳を細めながら、ケイは言葉を続けた。

「ん？引っ越したいなら、引っ越してきてもいいけどってこと。部屋も空いてるしな」

「えぇぇっ！いや！いくらなんでもそれは・・・っ！」

「あはは！冗談だよ」

「だ、だよね・・・」

内心、ちょっとだけがっかりしながら、あたしは、変な愛想笑いをしてしまう。
それで、ふと思い立って、ちょっとだけ躊躇いながら、あたしは、ケイにこう聞いたのだった。

「ケイは・・・佐野さんと・・・住みたくはないの？」

「ん？」

きょとんとした顔をしたケイが、なんだか可笑しそうにくすくすと笑って、ぽんぽんってあたしの頭を叩く、
あたしは、亀みたいに首をすくめて、そんなケイを上目遣いに見てしまった。
ケイは言う。

「始まったな？優子の『ガク・コンプレックス』！」

「え！うぅ・・・だって・・・その・・・」

「まぁ・・・ガクと生活すんのも悪くはないと思うけど」

「ん・・・うん」

「そうなったらそうなったで、絶対あいつはうるさいから」

ケイはそう言って、可笑しそうに笑うと、ちょっと緊張気味になったあたしの顔を見つめながら、言葉を続ける。

「どうせなら、優子と二人の方がいい。
今、一緒に暮らしたいのは・・・ガクじゃなくて、優子なんだよ」

「え！？」

「何にも考えないで、可愛がれるのは優子だけ。だから、優子がいい」

くすくすと笑いながら、ケイは、あたしの髪を撫でる。
あたしは、顔を赤くしたまま、これは喜んでいいのことなのかな？ってそんなことを考えつつ、なんだか自然と、笑顔になってしまった。

「そ・・・そっか・・・」

気付けば、あたしの心臓は、どきどきと大きく鳴っていて、顔だけがカーって熱くなってた。
ケイは、どれだけ、あたしの心臓をどきどきさせれば、気が済むのか・・・

もぉ・・・
思い切り照れたあたしは、咄嗟に椅子を立った。

「うんと、あたしもお風呂入ってくるね！」

顔なんか真っ赤になってしまったから、きっとまたからかわれると思って、いそいそと着替えを持って、逃げるようにしてバスルームに駆け込んだのだった。