BitteR SweeT StrawberrY
あたしは、全身で、ケイの肌のぬくもりを感じたくて、少しの間、そのままでいたけど、急に恥ずかしくなって、そっと、唇を離した。
おそるおそる、目を開くと、ケイは柔らかく微笑んでいる。
ケイは、あたしの唇を指先ですうって撫でから、その唇で、あたしの唇を塞ぐ。
こうやって、この柔らかい唇にキスされるたびに、あたしは、魔法にかかってしまって、

ますます、ケイを好きになっていくんだ・・・・
胸が痛くなるぐらい・・・
あたしは・・・
ケイのことが好き・・・


ケイが倒れた日・・・
お医者さんが言ってた・・・
腕に、骨転移らしい所見があるって・・・

私は、ぎゅーっとケイを抱きしめたまま、切ない気持ちを隠すようにこういった。

「腕枕してもらって、ケイの腕が折れたら大変だから・・・あたし、ダイエットしないと!!」

「ぶっ」

あたしの返答を聞いたケイは、あははっておかしそうに笑って、くしゃくしゃとあたしの髪を撫で回したのだった。
「いいよ!優子はそのままで!痩せすぎは可愛くないぞ!」

「え!?だって!ほら、腕とか!脇腹とか!あたし!ぷにぷにだし!
体重とか!絶対ケイよりもあるよ!!」

「いいじゃんぷにぷに」

くすくすとそ笑いながらそう言って、ケイは、何を思ったか、あたしの脇腹のお肉を指先でくいって掴んだ。

「はぅ!!」

「可愛いじゃん、これ?やっぱ女の子は、これぐらいないと、触ったときに気持ちよくないしな」

「いやん!やめてよ!!!ひっどーい!!」

「あはははは!なんで怒んの?褒めてるんだよ!」

むぅってふくれっ面になったあたしを、おかしそうに笑って見つめながら、ケイは、不意に手を伸ばして、あたしの体を抱き寄せる。

「あっ」

ケイの両腕に抱き締められて、あたしは、きょとんとしてしまった。
重なるように触った素肌が気持ちいい・・・
思わず照れて唸ったあたしの耳元で、ふと、笑いを止めたケイが、小さな声で、囁いた。

「優子・・・ありがとう・・・」

「んっ・・・あたし・・・なにも、してないよ・・・」

「いや・・・優子がいてくれるだけで・・・安心する・・・
ありがとう・・・優子・・・」

「・・・・・」

あたしは、ケイにそう言われて、また、ぎゅうって胸が締め付けられるみたいに痛くなって・・・・
ケイの胸にほっぺを押し当てながら、あたしは、黙ったまま、首を横に振った。

あったかい肌・・・
柔らかくて、すべすべで、そして気持ちの良いケイの肌・・・

あたしから・・・
この幸せな気持ちを・・・
取らないでください・・・

お願いします・・・
ずっと一緒にいたいんです・・・

あたしの命と引き換えにできるなら、それでもいいです・・・
だから・・・
ケイを・・・
また、天使に戻したりしないでください・・・

お願いします・・・
ほんとに、あたしは、ケイのことが好きなんです・・・

だから・・・
お願いします・・・
例え元が天使だったとしても・・・
連れ戻したりしないでください・・・

新しい治療法が、ケイに効いてくれますように・・・
病気が、消えて無くなりますように・・・
お願いします・・・

あたしは、窓辺のお月様の光を浴びながら、何度も、何度も、そうやって、その言葉を心の中で繰り返しながら、ケイのぬくもりを全身でじっと感じていた。
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