BitteR SweeT StrawberrY
       *
人生の選択っていうのは、大きな選択肢と小さな選択肢があって、この時のあたしは、まさか、自分の小さな選択肢が、貴重な出会いに繋がるなんて思ってもいなかった。
とにかくあたしは、ケイのために、今、あたしが出来ること頑張ろうって、ただそれだけを思っていたから、美保からあんな電話をもらっても、買い物に出られたのかもしれない。
それを考えると、ケイの言うとおり、やっぱり、少し変わったのかも・・・
変わったというか・・・
ちょっとだけ、強くなったのかもしれない・・・

スーパーで買い物をして、自分の家の冷蔵庫に、まだ卵が残っていたことを思い出したあたしは、ケイの部屋に戻る前に、一度、家に戻ることにした。
マンションのエントランスのところに来た時のこと、路地の隅の生垣の所で、あたしと同じ歳ぐらいの女の人が、誰か携帯で電話をしてた。
あたしは、気にせずにその人の前を通りすぎようとした。
その時。
その人は、ハッとあたしの方を振り返って、携帯を耳に当てたまま、突然「ちょっと待って!」って、あたしに向かって叫んだのだ。
あたしは、きょとんとして、その人を振り返る。
携帯を切ってポケットに入れながら、その人は急いであたしのところまで走ってきた。

「?????」

あたしは、その人の顔をまじまじと見つめてしまう。
どこかで、見たことのある顔・・・・
どこかで会ったのかな?

「あ・・・あの?なんでしょう?」
あたしが、きょとんとしたままそう聞くと、その人は、何故かニコっと笑ってこう言ったのだ。
「週刊CAP!の高田です。この間お会いしましたよね?」

「・・・・っ」

あたしは、ハッとした。
そうだ、この人・・・会社の前であたしに声をかけてきた、あの記者さんだ。
ちょっと警戒したあたしは、一歩後退して、逃げ腰になりながらこう聞いたのだ。

「あのっ、あたし、ほんっと何の関係もないですよ・・・っ」

「ああ、そんな怖い顔しないで。大丈夫ですよ、ただ、ほんとにあなたが行方不明かどうか、見に来ただけですから。ここにいるってことは、行方不明なんかじゃないもんね」

高田さんは、なんだかやけににっこり笑ってそう答えた。
まだ警戒の解けないあたしは、じーって高田さんを見つめたまま、もう一歩後退する。

「あのっ・・・なんでここが、あたしの住んでるとこだって、判ったんですか?」

「それは企業秘密です。でも、そういうの調べて取材かけるのも、わたしたちの仕事の一貫だからね。
うん・・・そっか、やっぱり週刊ブロックの記事は誤報か・・・」

高田さんはそんなことを呟いて、ふと、あたしの顔をまっすぐ見つめると、まるで、友達にでも会っているみたいな口調と表情で言葉を続けた。

「ねぇ、お茶飲まない?おごるから!」

「はい???」

あたしは、ますますきょとんとして高田さんの顔を見る。
高田さんはおかしそうに笑って言葉を続けた。

「まぁ、もちろん、取材も兼ねてだけど。高級ランチとかでもOKだよ。全部経費で落ちるからさ!」

「・・・・え?」

「大丈夫大丈夫。私個人は、きっと、あなたはほんとに何も知らないんだろうなって思ってるから。でも、やっぱりこういう仕事だから、色々聞きたいじゃない?
行こうよ、ただ飯食べられると思ったら、一緒に行ったほうが特だと思うよ」

「・・・・・・・」

大胆というか、図々しいというか・・・
この人、こういう職業のせいなのかな?
なんか、怖いもの知らずなのかなって・・・・
感心したというか呆れたというか・・・
なんだかきょとんとしてしまったけど、なんとなく、この人は悪い人ではなさそうだし、ちょっとだけ、話しするぐらいならいいかなって、あたしはそんなことを思い・・・
結局、高田さんの取材を受けることになったのだ。

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