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    *
近所のファミレスで、何故か週刊誌記者の高田 礼奈(たかだ れいな)さんとお茶をすることになったあたし。
高田さんは、あたしの向かいに座って、メモとボイスレコーダーを取り出して、なんだかにこやかに、緊張するあたしを見つめていた。

「うちの会社さ、こういう飲食代って結構でるからさ。私の先輩とか、それでキャバクラとか行っちゃうんだよ、取材かける人連れて」

おかしそうにそう言った高田さんは、メニューを見ながら言葉を続ける。

「押野優子さん、だったよね?うーん、大人しいタイプだよね~」

「え?そ・・・そうですか?」

「そう思えるけどな~・・・あ、好きなの頼んで。もしかして、食事は終った?」

「いえ・・・まだ、です」

「この際だから一杯食べていいよ。私の財布は痛くないからさ」

「あ・・・そ、そうなんですか?」

「何がいい?」

「じゃ・・・コーヒーで・・・」

あたしが、苦笑してそう答えると、高田さんはうふふって笑って、店員さんを呼んだ。
高田さんは、店員さんが来るやいなや、ランチセットを二つに、デザートセット、そしてサラダとから揚げとポテトまで頼んで、あたしに向かってにっこり笑う。
余りにも豪快に注文するから、あたしは、思わずポカーンとしてしまった。

「これぐらい食べないと、徹夜なんてできないからね!」

半ば呆然とするあたしにそう言って、高田さんは、さっそくメモとボールペンを持つと、ボイスレコーダーをONにして、言葉を続けた。

「ご飯の前にお仕事済ませちゃうね」

「あ・・・は、はい・・・」

あたしは、そういわれて、また少し緊張して背筋を伸ばしてしまう。
高田さんはメモに何か書きながら、単刀直入にこう聞いてきた。

「押野さんは、自分の彼氏・・・つまり村木大輔さんの起こした詐欺事件について、ほんとに何も知らないの?」

「知りません!全然!それに、もう彼氏じゃないです。それが発覚するちょっと前に、別れてたんです。実は」

「お!それは初じめて聞いた話しだな・・・立ち入ったことで申し訳ないけど、別れたってどうして?」

「浮気・・・してたんです、大ちゃん。それで・・・」

「ああ・・・・・」

高田さんは、何か確信したようにうんうんと頷いてメモを取ると、ちょっと真剣な表情になって、あたしに向かってさらに質問してくる。

「うーん・・・そっかぁ・・・ちなみに、浮気相手ってどんな人か知ってる?」

「知ってます・・・・浮気現場を目撃したんで・・・なんか、水商売してる感じの、派手で若い女の子でした。なにか、ブランド品かなんかをプレゼントとかしてました」

「え?それを見たってこと?」

「見ました・・・」

「どこで?」

「お台場の・・・日星ホテルのレストランで・・・」

「高級ホテルだなぁ・・・・うーん・・・そっかぁ・・・
うんとね、もしかしたらショック受けるかもしれないけど」

「え?はい?」

「押野さんの元彼・・・押野さんが見たっていう女の他に、付き合ってる女がもう一人、居るよ」

「え?!ほんとですか!?」

「ほんとほんと。これはちゃんと取材したから確実。私が調べた限りだと、村木さんと同じ会社に勤めてる、年上の人妻。それがもう一人の交際相手」

「はい?!」

「間違いないよこれは・・・・嫌な男だね」

渋い顔をしてそう呟いた高田さんの顔を、あたしは、ひたすら、呆然として眺めるしかできなかった。
あのキャバ嬢の他に、もう一人、会社の人と・・・それも、人妻と付き合ってたなんて・・・・
あたし・・・
ほんと、全然・・・
気付きもしなかった・・・
ショックというか・・・
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