BitteR SweeT StrawberrY
むしろ、あたしは呆れ返って、一瞬、何も言えなくなった。

「・・・・・なんていうか・・・・なんなんですか・・・・ほんとに」

「うーん・・・付き合ってた方としては、そう思うよね~・・・
付き合ってた頃の村木さんて、どんな感じだった?」

「え?うーん・・・朗らかで・・・優しい感じで、やり手の営業マンって感じでした・・・
一応・・・プロポーズとかされてたんですけど・・・・
なんか、結婚しなくてよかったです・・・」

「え??ほんとに!?」

「はい・・・」

「ああ・・・じゃあ、一応・・・いや、一応って言ったら申し訳ないけど、彼の中では押野さんが本命だったのかもね・・・」

「そうかな・・・?結局、別れた理由っていうのは、『嫌になったらすぐ離婚すればいいよ』とか・・・そういうのを、浮気相手に言ってたからなんですよ」

「え?ほんとですか?」

「ほんとです・・・」

「ひどいな~・・・うーん、じゃ、ここはずばり聞いておくけど、押野さん、村木さんに、何か高額のプレゼントとかもらったことある?」

「ないです。誕生日に、ネックレスとかはもらったことありますけど・・・ブランド品ではなかったですし、一緒に買いにいったけど、確か4~5万ぐらいだったと思います」

「うーん・・・・・記者は主観入れたらダメなんだけど・・・最低な男だと思う」

「・・・だから、大ちゃんが詐欺したお金って、もし使ってるなら、他の二人にだと思いますよ。いつも出張出張って言って、あたし、あんまり会ってなかったし。
そんなに大事にされてたわけじゃないと思います」

高田さんは眉を眉間に寄せて、じーってあたしの顔を見つめると、こんな質問を投げかけてくる。

「村木さんさ、いま、どこにいるとか、何か見当つく?」

あたしは、ふるふると首を横に振った。

「全然つかないです」

「そう・・・・週刊ブロックに書いてあった、交際相手行方不明っていうのは、もう一人の交際相手、つまり、彼の会社の人のことだな、多分。
まだそっちには行ってなかったから、ほんとに行方不明かどうかは、調べてみないと判らないけど・・・人妻か・・・」

「あのぉ・・・実は、大ちゃんがいなくなる前の夜」

あたしがそう話しを振ると、高田さんは、興味深々と言った様子でメモにペンを走らせる。
あたしは、ちょっとうつむき加減になって、言葉を続けた。

「いきなり、あたしのとこに会いにきて・・・
なんていうか、自分にはもうあたししかいないみたいなことを言ってました・・・・
でも、あたし、もう嫌だったから、断って・・・
っていうか、その・・・友達に助けてもらってっていうか・・・
今思うと、詐欺がバレそうになって、逃げるためのお金の無心でもしたかったのかなって・・・
浮気相手にフラレたのかもしれませんけどね・・・」

「ああ・・・それって、事件発覚する前のことだよね?」

「そうですそうです。いなくなる直前・・・だったと思います」

「なるほど~・・・・・うん、それは今まで、知らなかった情報だわ。
逃亡資金の無心とか・・・なんか、ほんとに・・・呆れるっていうか・・・」

「ですよね~・・・」

「主観で悪いけど・・・男としても人してもどうかと思うよね?
うんうん、そっかそっか・・・やっぱり、いい話聞けた」

「そうですか?」

「とってもいい感じだよ、よし、これなら、なんとかなるな・・・
食事したら、その人妻の所在だけ確かめて、会社戻って原稿かかないと!」

「忙しいですね?」

なんだか意気揚々としてきた高田さんを見て、あたしは、思わず笑ってしまう。
マスメディアの人なんて、適当なことばっかり書くのかと思ってたけど、ちゃんとこうやって取材して、締め切り時間に間に合わせるんだなって、すごいなってそう思った。
ちょうど、運ばれてきた料理を目の前にして、高田さんはふうって大きく息を吐くと、にっこり笑ってこう言ったのだ。
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