BitteR SweeT StrawberrY
    *
昨日はそんなことなかったのに、今日は、仕事中にも関わらず、端末には、メールの着信がやけに多い。
お昼になるまでに、着信したメールは13通。
そのうち何通かは、確かに仕事のメールだったけど、他のは、例の嫌がらせとしか思えないメールばっかりだった。

ほんとに、みんな、暇だよね・・・
これを、上司に報告されたら、どうするつもりなんだろう・・・

あたしはそう思って、大きくため息をつくと、とりあえず、メールを開いてみる。

『金払うとヤラせてくれるってほんとですか?』
『いつ会社辞めるの?居られるとうざいんだけど』
『会社にこないでください。雰囲気悪くなる。企業のイメージダウンとか思わないの?』
『彼氏いなくて寂しいんじゃない、いつでも○○に○○つっこんでやるよ』
『きもい、死ね』
『よく堂々と出勤できるよね。相当鈍いんだね』
『はっきり言えよ~おまえも詐欺って金取ってたんだろ?』

とりあえず、これも全部Rに焼いておこう・・・
複数の人がグループみたいになってやってるのか、送信者偽装して個人でやってるのかわからないけど、とにかく、あたしは何も悪いことしてないし・・・
やらなくちゃいけないことを、きちんとやればいいだけ・・・
もちろん、こんなのばっかり送りつけられたら、気分は滅入るけど、それでも、仕事上の責任はあるから・・・・
頑張らないとね・・・

休憩時間になって、あたしはお昼を買いに行こうと席を立った。
同僚たちも、みんな昼食に出て行こうとしている。
何故か今日は、誰も、あたしを食事に誘ってくれる人はいなかったけど・・・まぁ、気にしないことにしよう。
そう思って、エレベーターホールに向かって廊下を歩いていく。
後ろから、誰かが近づいてくる足音がする。
二人ぐらいかな・・・
なんだかくすくすと笑っている声も聞こえてる。
あたしは振り向かないことに決めて、そのままエレベーターホールに向かう。
清掃員さんが使ってる用具倉庫の前を通りかかったときだった。
後ろをついてきていた足音が、いきなり走る足音に変わったと思うと、いきなり、グイって襟元を掴まれる。

「あっ・・・!?」

よろけたあたしの体を引きづるようにして、もう一人の誰かが、用具倉庫のドアを開けた。
あははは!って女の人の笑い声がすると同時に、あたしの体は、押し飛ばされるようにして用具倉庫の中に倒れこんでしまう。
え!?って思った瞬間、ばたんって音がして、用具倉庫のドアが閉じられた・・・
何がなんだかわからないうちに、視界は真っ暗になり、外からガチャって鍵のかかる音。

「な・・・なに!?」

あたしにはその状況が理解できなくて、床の上に倒れたまま、呆然としてしまった。
これは・・・
もしかすると・・・
閉じ込められた・・・・!?
ドアの向こうから、笑い声がする。

「図々しいよね~どうせ彼氏と一緒に詐欺やってたんでしょ?」

「よく捕まらなかったね~上手くやったよね~」

あははははって、ドアの向こうで、あたしをここに閉じ込めた人達が笑ってる。
聞いたことあるような、無いような声の二人組み・・・だと思う。
それを聞いていて、ものすごく腹が立ってきたあたし。
でも、ここで言い返しても、何が解決するわけじゃないし、とにかく、冷静になろうと思って、あたしは、床の上で起き上がりながら、大きく二回深呼吸した。
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