BitteR SweeT StrawberrY
ドアの向こうで誰かがあはははって楽しそうに笑ってる。
この間、あたしを用具倉庫に閉じ込めた連中かもしれない。

きっとバケツか何かで、個室の上からあたしに向かって水をかけたんだ・・・
バックの中に入っていた携帯は無事。
でも、あたしは頭から足先まで、まるで豪雨に降られたみたいにびっしょりと濡れてしまっていた。

もちろん、服もびしょびしょ・・・・
着替えなんか持って来てる訳もなく・・・

個室の中でフリーズしてしまったあたしをあざ笑うみたいに、ドアの向こうで誰かが笑ってる。
すごく楽しそうにげらげら笑ってる。

ショックというか・・・・
なんでこんなことされないといけないのか・・・
なんというか・・・

物凄く怒りがこみ上げてきて、あたしは、ぎゅって唇を噛み締めると、棚の上のバックを取って、物凄い勢いでドアを開いた。
バタンって大きな音がこだまする。
まさか、あたしが個室から出てくるとは思ってなかったのか、ドアの向こうであたしを笑ってた二人が、ぎょっとした顔をして、あたしに振り返った。

その二人は・・・
間違いなく・・・

あたしと同じ部署の矢口先輩と、後輩の関さんだったのだ。

「一体、なんでこんなことするんですか?」

あたしは、びしょびしょに濡れたまま、じろって二人の顔を睨み付けた。
いじめられてる人って、いじめをしてる人に文句言ったりしないものだと思う。
きっとこの二人も、あたしが切れて文句を言ってくるとは思っていなかったのだろう。
二人とも唖然としていたけど、すぐに開き直った顔をして交互にこう返してきたのだ。

「はぁ?わからないの?人のお金騙し取るような人間が許せないだけよ」

「大して可愛くもないくせに、大人しいふりしてよくのこのこ会社とか来れるよね?」

一体、何を言ってるんだろう、この人たちは・・・?
今、あたしは物凄く胃が痛くて、気分だって悪いけど、この意味不明な言葉を許すことなんかできなかった。
あたしの体はぶるぶると震えてくる。
寒くて震えてたんじゃない、腹が立ちすぎて震えていたんだ。

きっと、前のあたしなら、やられっぱなしになってたかもしれないけど・・・
今のあたしは・・・
少なくとも、前よりは少しだけ強くなってるはずだ・・・

あたしは、奥歯をぎゅって噛み締めて、矢口先輩の手にあるバケツを強引に奪い取ると、怒りに任せて思い切りそれを床に投げつけてみた。
派手な音がトイレの中に響いて、バケツの取っ手が取れて床の上を滑っていく。
まさか、あたしがそんなのことをするとは思わなかったのか、矢口先輩も関さんも、思い切り面食らった顔をしてまじまじとあたしの顔を見る。

あたしは、きっと、それこそ鬼のような顔つきをしていたんだろう・・・
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