BitteR SweeT StrawberrY
*
お客さんから、2000万円ものお金を騙し取った大輔は、このあと、あたしと一緒に、近くの交番まで行って、そこで逮捕という形になった。
自分のした間違いは、自分で責任を取るしかないから、大輔も、こうやって自分で責任を取るしかないんだと思う…
交番の前で、パトカーに乗せられた大輔が、あたしに向かって、小さく笑ってくれたのが、なんだか印象的だった。
こうして、あたしと大輔との縁は完全に途切れることになった。
あたしの中には、一切の後悔はなかった。
見上げた夜空の下には、満開の桜が咲いている。
新百合ヶ丘駅の隣の駅に、こんな桜並木があったなんて、あたしは、その日まで全然知らなかった。
あたしの隣を歩くケイは、もうずっと前から、此処を知ってたみたいだった。
「おまえ…ほんと、なんか変わったよな。
初めて会った時なんか、常に挙動不審だったのにな」
ゆったりとした歩調で、あたしの隣を歩きながら、ケイは、なんだか可笑しそうにそう言って、その綺麗な瞳を、頭の上の桜に向ける。
あたしは、そんなケイの横顔をちらっと見て、思わず笑った。
「そうかなぁ?」
「うん…優子に、こんな行動力あったなんて、ぶっちゃけ、オレは知らなかった。
まぁ、やればできる子ってことだよな」
からかうようにそう言って、ケイは、くしゃくしゃとあたしの髪を撫でる。
「なにそれ~?!
小学生じゃないんだからぁ!」
あたしは、むぅって唸ってそう言い返した。
ケイは、可笑しそうに笑っていた。
そんなケイの肩ごしに、沢山の桜の花弁が、ひらひらと舞っている。
もう、散ってしまう綺麗な桜の花。
薄いピンクの花弁の中にある、ケイの笑顔。
それを見ていたら、あたしは、何故か急に不安になってきて、思わず、その場で足を止めてしまった。
不思議そうな顔をして、ケイも、ぱたって足を止める。
「お?どうした?」
「え?うーん…うーん……な、なんでもない、よ」
変な愛想笑いをしながら、あたしはふるふると首を横に振る。
ケイが…
この桜の花と一緒に消えてしまいそうで、なんだか怖くなったなんて…
言えないよね…
あたしは、もう一度ごまかすように笑って、こう言った。
「大ちゃんが、ほんとにあたしの所に連絡してくるなんて、思ってなかったから、びっくりしちゃったよ…
反省してたみたいだし、きっとこれでよかったんだよね…」
「よかったんじゃないのか?」
ケイは、そう言って笑うと、言葉を続ける。
「元から、何人も女こませるだけの器量も財力もなかったんだよ。思い上がるとろくなことにならないって、わかっただろうからな。本気で反省してれば、反省点ふまえて、再出発できるだろ」
「うん…そうだよね」
「うん」
小さく頷いたケイの肩に、小さな花弁がひらひらと落ちた。あたしは、そんなケイの肩に手をのばして、花びらを摘まんでみる。
桜並木の向こう側を、小田急の快速が、大きな音を立てて走り抜けて行った。
ざわって桜並木が揺れて、円を描くように桜の花弁が舞散る。
電車が通り過ぎる轟音に負けないように、あたしは、叫ぶようにケイに言った。
「ここ、電車通らなければ静かでいいのにね!ケイ、前から此処知ってたの!?」
ケイは、必死で叫ぶあたしを見て、また可笑しそうに笑う。
お客さんから、2000万円ものお金を騙し取った大輔は、このあと、あたしと一緒に、近くの交番まで行って、そこで逮捕という形になった。
自分のした間違いは、自分で責任を取るしかないから、大輔も、こうやって自分で責任を取るしかないんだと思う…
交番の前で、パトカーに乗せられた大輔が、あたしに向かって、小さく笑ってくれたのが、なんだか印象的だった。
こうして、あたしと大輔との縁は完全に途切れることになった。
あたしの中には、一切の後悔はなかった。
見上げた夜空の下には、満開の桜が咲いている。
新百合ヶ丘駅の隣の駅に、こんな桜並木があったなんて、あたしは、その日まで全然知らなかった。
あたしの隣を歩くケイは、もうずっと前から、此処を知ってたみたいだった。
「おまえ…ほんと、なんか変わったよな。
初めて会った時なんか、常に挙動不審だったのにな」
ゆったりとした歩調で、あたしの隣を歩きながら、ケイは、なんだか可笑しそうにそう言って、その綺麗な瞳を、頭の上の桜に向ける。
あたしは、そんなケイの横顔をちらっと見て、思わず笑った。
「そうかなぁ?」
「うん…優子に、こんな行動力あったなんて、ぶっちゃけ、オレは知らなかった。
まぁ、やればできる子ってことだよな」
からかうようにそう言って、ケイは、くしゃくしゃとあたしの髪を撫でる。
「なにそれ~?!
小学生じゃないんだからぁ!」
あたしは、むぅって唸ってそう言い返した。
ケイは、可笑しそうに笑っていた。
そんなケイの肩ごしに、沢山の桜の花弁が、ひらひらと舞っている。
もう、散ってしまう綺麗な桜の花。
薄いピンクの花弁の中にある、ケイの笑顔。
それを見ていたら、あたしは、何故か急に不安になってきて、思わず、その場で足を止めてしまった。
不思議そうな顔をして、ケイも、ぱたって足を止める。
「お?どうした?」
「え?うーん…うーん……な、なんでもない、よ」
変な愛想笑いをしながら、あたしはふるふると首を横に振る。
ケイが…
この桜の花と一緒に消えてしまいそうで、なんだか怖くなったなんて…
言えないよね…
あたしは、もう一度ごまかすように笑って、こう言った。
「大ちゃんが、ほんとにあたしの所に連絡してくるなんて、思ってなかったから、びっくりしちゃったよ…
反省してたみたいだし、きっとこれでよかったんだよね…」
「よかったんじゃないのか?」
ケイは、そう言って笑うと、言葉を続ける。
「元から、何人も女こませるだけの器量も財力もなかったんだよ。思い上がるとろくなことにならないって、わかっただろうからな。本気で反省してれば、反省点ふまえて、再出発できるだろ」
「うん…そうだよね」
「うん」
小さく頷いたケイの肩に、小さな花弁がひらひらと落ちた。あたしは、そんなケイの肩に手をのばして、花びらを摘まんでみる。
桜並木の向こう側を、小田急の快速が、大きな音を立てて走り抜けて行った。
ざわって桜並木が揺れて、円を描くように桜の花弁が舞散る。
電車が通り過ぎる轟音に負けないように、あたしは、叫ぶようにケイに言った。
「ここ、電車通らなければ静かでいいのにね!ケイ、前から此処知ってたの!?」
ケイは、必死で叫ぶあたしを見て、また可笑しそうに笑う。