BitteR SweeT StrawberrY
電車が通り過ぎて、辺りがまた静かになった頃、ケイは、くすくすと笑いながら、こう言ったのだ。
「知ってたよ。
まぁ、オレも、ガクに教えてもらったんだけどさ。あいつ、実家、湘南だから、よく小田急使ってたんだってさ」
「あ~…そっか、江ノ島線かぁ」
「そそ」
「ほんと、佐野さんもいろんな所知ってるよね…
あたしなんて、行動範囲狭いからほんとに何もしらないよ~」
「優子らしい優子なとこだな!」
「またそうやって馬鹿にする~!ひっど~い!」
「馬鹿にしてないよ。ほんとのこと言っただけだろ?」
ケイは、あははって笑って、くしゃくしゃとあたしの髪を撫でた。
なんだか、すごく優しい表情になったケイが、静かに口を開いて言葉を続ける。
「そんな優子が、元彼をちゃんと説得して、出頭させたんだから、やっぱ凄いよな?
おまえ、ほんと成長した」
「はうっ」
ケイが、やけに真面目にそんな事を言うから、あたしはなんだか照れて、亀みたいに首をすくめてしまう。
ケイに褒められると、あたしは、子供みたいに嬉しくなってしまう。
これがケイの魔法の言葉で、きっと、そんなケイの言葉が、今までのあたしができなかったことを、こうやって、自然とやらせてしまうんだと、あたしは、そう思った。
あたしの目の前で、ケイが笑ってる。
いつの間にか、それが普通のことになっていて、例えば、ある日突然、ケイが消えてしまったら、一体、あたしは、どうなってしまうのかなって・・・
そう思ったら、あたしの心の中に、また暗い不安がざわざわと騒ぎ始めて、あたしはそのまま、両手を伸ばして、ぎゅうってケイに抱きついてしまった。
ケイは、きょとんとした顔をして、そんなあたしの体を抱きとめてくれる。
「なんだ?どした?」
あたしは、ふるふると首を横に振って、あえて心の不安は口にしないで、違うことを言ってみる。
「安心したの・・・・ほら、大ちゃん、ちゃんと出頭してくれたから・・・
緊張してたんだ・・・ほんとは・・・」
「そうか」
ケイはそう答えて、唇だけで小さく笑うと、言葉を続けた。
「大仕事だったよな。おつかれ・・・・週刊CAP! の記者も喜んでたしな。
まぁ、確かに、あの子は、記事に嘘は書かないと思うよ」
「高田さん?」
「うん。まっすぐだったからな、目」
「ああ・・・そうだね。なんかこう、強いよね。仕事の生きがい持ってるのがよく判るよね。あたしも・・・ケイや、美保や、高田さんみたいに、何かにポリシーを持って生きていきたいな・・・」
「うん。そういえば、優子の目標、見つかったか?」
ゆっくりと顔を上げたあたしに、ケイはそう言って、もう一度小さく笑う。
あたしは、うーんって考えこんで、えへって笑った。
「まだ・・・見つかってないかもだけど・・・うーん、きっと見つかると思う」
「変な答えだな」
可笑しそうに笑ったケイが、ぎゅってあたしの体を抱き締める。
あたしも、そんなケイの華奢な背中を抱き締めて、えへへって笑った。
「変な答え・・・うん、変な答えかもね!
でも、頑張ってみつけるよ!なんだか、見つかりそうな気がするんだ、近いうちに」
「そっか」
「うん」
夜のあったかい風に、ひらひらと、桜の花が舞う。
ケイを抱き締めるあたしの背中の方から、また電車の音がしてきた。
桜の花弁を舞い上げる電車の轟音の中で、あたしは、強くケイを抱き締めて、思わずこう言った。
「あたしの目標が見つかるまで・・・
ううん・・・目標が見つかっても・・・
ずっと、一緒にいてね・・・・
居なくなったりしないでね・・・・」
そんなあたしの声が聞こえたのかわからないけど・・・・
その時ケイは、とっても穏やかな表情で、笑った。
来年も一緒に、ここに来ようね・・・
今度こそ・・・
カフェオレ用意するから・・・
一緒に・・・
来ようね・・・
ケイ・・・
「知ってたよ。
まぁ、オレも、ガクに教えてもらったんだけどさ。あいつ、実家、湘南だから、よく小田急使ってたんだってさ」
「あ~…そっか、江ノ島線かぁ」
「そそ」
「ほんと、佐野さんもいろんな所知ってるよね…
あたしなんて、行動範囲狭いからほんとに何もしらないよ~」
「優子らしい優子なとこだな!」
「またそうやって馬鹿にする~!ひっど~い!」
「馬鹿にしてないよ。ほんとのこと言っただけだろ?」
ケイは、あははって笑って、くしゃくしゃとあたしの髪を撫でた。
なんだか、すごく優しい表情になったケイが、静かに口を開いて言葉を続ける。
「そんな優子が、元彼をちゃんと説得して、出頭させたんだから、やっぱ凄いよな?
おまえ、ほんと成長した」
「はうっ」
ケイが、やけに真面目にそんな事を言うから、あたしはなんだか照れて、亀みたいに首をすくめてしまう。
ケイに褒められると、あたしは、子供みたいに嬉しくなってしまう。
これがケイの魔法の言葉で、きっと、そんなケイの言葉が、今までのあたしができなかったことを、こうやって、自然とやらせてしまうんだと、あたしは、そう思った。
あたしの目の前で、ケイが笑ってる。
いつの間にか、それが普通のことになっていて、例えば、ある日突然、ケイが消えてしまったら、一体、あたしは、どうなってしまうのかなって・・・
そう思ったら、あたしの心の中に、また暗い不安がざわざわと騒ぎ始めて、あたしはそのまま、両手を伸ばして、ぎゅうってケイに抱きついてしまった。
ケイは、きょとんとした顔をして、そんなあたしの体を抱きとめてくれる。
「なんだ?どした?」
あたしは、ふるふると首を横に振って、あえて心の不安は口にしないで、違うことを言ってみる。
「安心したの・・・・ほら、大ちゃん、ちゃんと出頭してくれたから・・・
緊張してたんだ・・・ほんとは・・・」
「そうか」
ケイはそう答えて、唇だけで小さく笑うと、言葉を続けた。
「大仕事だったよな。おつかれ・・・・週刊CAP! の記者も喜んでたしな。
まぁ、確かに、あの子は、記事に嘘は書かないと思うよ」
「高田さん?」
「うん。まっすぐだったからな、目」
「ああ・・・そうだね。なんかこう、強いよね。仕事の生きがい持ってるのがよく判るよね。あたしも・・・ケイや、美保や、高田さんみたいに、何かにポリシーを持って生きていきたいな・・・」
「うん。そういえば、優子の目標、見つかったか?」
ゆっくりと顔を上げたあたしに、ケイはそう言って、もう一度小さく笑う。
あたしは、うーんって考えこんで、えへって笑った。
「まだ・・・見つかってないかもだけど・・・うーん、きっと見つかると思う」
「変な答えだな」
可笑しそうに笑ったケイが、ぎゅってあたしの体を抱き締める。
あたしも、そんなケイの華奢な背中を抱き締めて、えへへって笑った。
「変な答え・・・うん、変な答えかもね!
でも、頑張ってみつけるよ!なんだか、見つかりそうな気がするんだ、近いうちに」
「そっか」
「うん」
夜のあったかい風に、ひらひらと、桜の花が舞う。
ケイを抱き締めるあたしの背中の方から、また電車の音がしてきた。
桜の花弁を舞い上げる電車の轟音の中で、あたしは、強くケイを抱き締めて、思わずこう言った。
「あたしの目標が見つかるまで・・・
ううん・・・目標が見つかっても・・・
ずっと、一緒にいてね・・・・
居なくなったりしないでね・・・・」
そんなあたしの声が聞こえたのかわからないけど・・・・
その時ケイは、とっても穏やかな表情で、笑った。
来年も一緒に、ここに来ようね・・・
今度こそ・・・
カフェオレ用意するから・・・
一緒に・・・
来ようね・・・
ケイ・・・