BitteR SweeT StrawberrY
平凡すぎて、自分に自信も持てない『普通』なあたしを、この人は、『本当のあたし』にしてくれるつもりなのだろうか・・・

あたしは、ケイの綺麗な顔を見つめたまま、思わず黙ってしまった。
あたしは、きっと、臆病なだけなんだ。
周りからはみ出してしまうことに臆病で、結局、何もできないまま、ずっとここまできてしまった。

「ケイさん・・・ケイさんの言うこと・・・本当のことだと、思う」

「ケイさん・・・じゃないだろ?」

ケイはそう言っておかしそうに笑った。

「う・・・っ」

あたしは、思わず唸って、ちょっと上目遣いにケイを見る。

「ケイ・・・でした」

「うん」

頷いたケイは、横になったままの姿勢で、あたしの髪を、まるで、道端の猫でも撫でるように何度も撫でてくれた。
この人はすごい人だ。
会って間もないこのあたしの心に、簡単に入ってきてしまう。
本当に、男とか女とか、そんな垣根すらない人だと思う。
あたしの常識なんて、ほんとに、小さなものなのかもしれない・・・

「ケイが・・・みんなに好かれるの・・・よくわかるよ」

あたしは、思わず照れてしまいながら、やっとの思いでそう言った。

「そうかな?」

「うん・・・ケイみたいに、なりたいな・・・」

「どうして?」

「だって・・・あたしの見てるものなんて、結局小さい世界で、あたしはその中で、ちょこちょこ動いてるだけ。このまま、小さな世界で、ほんとに平凡に結婚して、子供が生まれたらその子の世話をして、ずっとずっと、平凡のまま、きっとおばあちゃんになってくんだと思う」

「結婚すんの?」

「うーん・・・みんな、周りの人は、そう思ってる、かな?」

「優子は結婚したいの?」

「うーん・・・・なんか、よくわからないんだ・・・でもきっと、それが一番いいことなのかなって・・・」

「まぁ、オレは何かを言える立場じゃないけど・・・自分が、後悔しないような選択をしたらいい。あとになって、なんで結婚したんだろうって思うぐらいなら、周りがなんて言おうと、しなければいい」

「・・・・・・そう、だよね・・・」

「周りじゃなくて、まず、自分がどうしたいか、一番重要なのは、そこだよ」

「うん・・・わかってるんだ・・・それは・・・でも、なんか、勇気がなくて・・・周りの意見とか、期待に・・・こたえないといけないような気がして」

「修行が足りないな」

「うっ・・・修行?しゅ、修行なんだ・・・?」

「うん、修行だな。修行しにくる?」

「え??」

「週末だけ、うちの店の品出ししに?優子の会社、バイト禁止かな?」

「見つからなければ、結構平気かな?同僚にもバイトしてる人いるよ」

「世界を広げにきてみたら?優子の友達とか知り合いとかにはいないような人種が、うちのスタッフには多いかもしれない」

ケイにそう言われて、あたしは、なんだか、急に嬉しくなった。
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