BitteR SweeT StrawberrY
*
「優子、葉山いくか?」
診察が終わり、会計を済ませて、駅へ向かう途中のこと。
ケイはいきなりそんなことを言い出した。
隣を歩いていたあたしは、きょとんとして、ケイの横顔を見つめてしまう。
ケイは、その綺麗な目でゆっくりとあたしを振り返ると、やけに穏やかに笑ったのだった。
「葉山???」
「うん」
「なんで葉山??どうしたの急に?」
「葉山はさ、実家あるんだよな。ついでに・・・両親の墓も」
「あ・・・・」
あたしは、ハッとした。
そうだ、あたし、ケイと出会って役半年、ケイがどこの出身か、全然、聞いたことなかった。
そんなこと気にならなかったし、別に聞こうとも思わなかった。
あたしが知ってるのは、今、現在のケイであって、過去のケイのことはほとんど知らない。
だから、ケイに実家が葉山って言われて、ほんとに、新鮮に驚いたというか、感動したというか、なんだからちょっとだけ・・・変かもしれないけど、嬉しくなった。
あたしは、思わずにっこり笑って、大きく頷く。
「うん!いいよ!」
ケイは、そんなあたしの髪を片手でくしゃくしゃと撫でて、もう一度、にっこりと笑ってくれた。
横須賀線に乗って、逗子で降りて、そこからタクシーに乗って葉山についたとき、時間は、もう、午後三時を回っていた。
ケイは、タクシーの運転手さんに、戻るまで待っててくれるように頼んで、あたしを連れて、ドラマに出てくるような海の見える墓地の中へ足を進めていった。
田所という名前が入ったお墓の前に立って、ケイは、ちょっとだけ切ない顔をしながら、だた、じーっと石碑を眺めている。
海からの風が強くて、ケイの着てるシャツの襟とジャケットの裾が大きく揺れていた。
あたしは、片手で髪を押さえながら、そんなケイの横顔を黙って見つめていた。
今、ケイは、一体、何を思って、ここでこうやって立っているんだろう・・・
あたしには、両親もいれば弟もいる。
おじいちゃんは亡くなったけど、おばあちゃんは健在。
だけどケイには・・・
佐野さんが、身元引受人になってるぐらいだから、きっと、家族と呼べる人は誰もいなんだろうと思う・・・
海鳴りが聞こえる。
葉山の海は澄んでいて綺麗。
ケイはここで生まれて育ってきたんだ・・・
ケイは今、ご両親のお墓に、一体何を語りかけているんだろう。
西に傾いてきた日差しの中の綺麗な横顔。
その横顔が、今にもその光の中に消えてしまいそうで、あたしの心は、ぎゅっと痛くなって、そして不安になった。
病気の進行は遅くなってるんだから、こんなに不安になることもないのにね・・・
「ケイ?聞いていいかな?」
あたしは、じーっとお墓を見つめているケイに、思わずそう声をかけた。
ケイは、ハッとしたように細い肩を震わせて、ゆっくりとあたしに振り返る。
「ん?どうした?」
「あ・・・うん・・・あの・・・」
「うん」
「ご両親・・・・どうして、亡くなったの?」
「交通事故かな」
「事故?」
「そそ。会社やってたから、うちの両親。二人そろって、得意先に行く途中に、居眠り運転のトラックに突っ込まれた・・・らしい。
じいちゃんはそう言ってたな。
オレはそん時、まだ五歳児だったから、両親が死んだ時のこと、あんまり覚えてないんだ」
そう言って、ケイは小さく笑った。
たった五歳で・・・ケイは、両親を失くしたんだ・・・
「優子、葉山いくか?」
診察が終わり、会計を済ませて、駅へ向かう途中のこと。
ケイはいきなりそんなことを言い出した。
隣を歩いていたあたしは、きょとんとして、ケイの横顔を見つめてしまう。
ケイは、その綺麗な目でゆっくりとあたしを振り返ると、やけに穏やかに笑ったのだった。
「葉山???」
「うん」
「なんで葉山??どうしたの急に?」
「葉山はさ、実家あるんだよな。ついでに・・・両親の墓も」
「あ・・・・」
あたしは、ハッとした。
そうだ、あたし、ケイと出会って役半年、ケイがどこの出身か、全然、聞いたことなかった。
そんなこと気にならなかったし、別に聞こうとも思わなかった。
あたしが知ってるのは、今、現在のケイであって、過去のケイのことはほとんど知らない。
だから、ケイに実家が葉山って言われて、ほんとに、新鮮に驚いたというか、感動したというか、なんだからちょっとだけ・・・変かもしれないけど、嬉しくなった。
あたしは、思わずにっこり笑って、大きく頷く。
「うん!いいよ!」
ケイは、そんなあたしの髪を片手でくしゃくしゃと撫でて、もう一度、にっこりと笑ってくれた。
横須賀線に乗って、逗子で降りて、そこからタクシーに乗って葉山についたとき、時間は、もう、午後三時を回っていた。
ケイは、タクシーの運転手さんに、戻るまで待っててくれるように頼んで、あたしを連れて、ドラマに出てくるような海の見える墓地の中へ足を進めていった。
田所という名前が入ったお墓の前に立って、ケイは、ちょっとだけ切ない顔をしながら、だた、じーっと石碑を眺めている。
海からの風が強くて、ケイの着てるシャツの襟とジャケットの裾が大きく揺れていた。
あたしは、片手で髪を押さえながら、そんなケイの横顔を黙って見つめていた。
今、ケイは、一体、何を思って、ここでこうやって立っているんだろう・・・
あたしには、両親もいれば弟もいる。
おじいちゃんは亡くなったけど、おばあちゃんは健在。
だけどケイには・・・
佐野さんが、身元引受人になってるぐらいだから、きっと、家族と呼べる人は誰もいなんだろうと思う・・・
海鳴りが聞こえる。
葉山の海は澄んでいて綺麗。
ケイはここで生まれて育ってきたんだ・・・
ケイは今、ご両親のお墓に、一体何を語りかけているんだろう。
西に傾いてきた日差しの中の綺麗な横顔。
その横顔が、今にもその光の中に消えてしまいそうで、あたしの心は、ぎゅっと痛くなって、そして不安になった。
病気の進行は遅くなってるんだから、こんなに不安になることもないのにね・・・
「ケイ?聞いていいかな?」
あたしは、じーっとお墓を見つめているケイに、思わずそう声をかけた。
ケイは、ハッとしたように細い肩を震わせて、ゆっくりとあたしに振り返る。
「ん?どうした?」
「あ・・・うん・・・あの・・・」
「うん」
「ご両親・・・・どうして、亡くなったの?」
「交通事故かな」
「事故?」
「そそ。会社やってたから、うちの両親。二人そろって、得意先に行く途中に、居眠り運転のトラックに突っ込まれた・・・らしい。
じいちゃんはそう言ってたな。
オレはそん時、まだ五歳児だったから、両親が死んだ時のこと、あんまり覚えてないんだ」
そう言って、ケイは小さく笑った。
たった五歳で・・・ケイは、両親を失くしたんだ・・・