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ケイの笑顔が、なんだか切なくて、あたしの胸はぎゅうって痛くなる。

「ん・・・そっか・・・そうだよね・・・子供だったんだもんね」

「うん」

「じゃあ・・・それからずっと、おじいちゃんに育ててもらったんだね」

「そうだな~・・・・じいちゃんとばぁちゃんかなぁ・・・・
じいちゃんの会社を父さんが引き継いでた感じだったから、両親死んだ後は、そのまま、叔父が会社を継いだよ。
大変だったのは、じいちゃんが死んだ時でさ。
結構資産家だったから、親戚連中で大もめして、嫌になって縁切った」

そう言って、ケイは何故かおかしそうに笑う。
あたしは、きょとんとして、そんなケイの顔をまじまじと見つめてしまった。

「え?」

「高校卒業して大学行ってる時だったかな、じいちゃん死んだの。
葬式の席でさ、じいちゃん死んで悲しいっていうより、残った財産どう分配するとか、そんな話しばっかしやがって、こんな連中が親族なんてバカらしいって思ってさ。
じいちゃん、そうなるの見越してたみたいで、オレがそれに巻き込まれないないように、オレ名義の口座にそこそこの資金を残してくれてた。
それをばぁちゃんから聞かされて、なんか、あん時は泣いたな・・・」

「うん・・・・・優しいおじいちゃんだったんだね・・・」

「いや、厳しかったよ。だから反発しまくってたけど・・・・ほんとは、どれだけ、じいちゃんがオレのこと考えてくれてたか、じいちゃん死んで、初めてわかって。
バカだったなぁってさ」

「ん・・・・そっか」

「うん」

「そこから、ずっと一人で暮らしてたかな。
それで、19だったか20歳だったかの頃にガクに会って、なんか気付いたら、いつもあいつが傍にいた」

「うん・・・・」

佐野さんという存在は、あたしにとって、きっと越えられない壁みたいなものなんだなって、その時、あたしはそう思った。
でも、別に、佐野さんを越えてみようなんて、あたしは全然思ってなかった。
あたしは、ただ、ケイの傍にいたいだけで、ケイの傍にいつも佐野さんがいたように、あたしも、ケイの傍にいられれば、それでいい・・・

ちょっとだけ冷たい海風の中で、切なそうに、でも、穏やかに笑うケイの姿。
あたしは、思わず手を伸ばして、ぎゅってケイの手を握ってしまう。
そして、思い切りの笑顔を作ってこう言ってみた。

「佐野さんだけじゃないよぉ!あたしだっているよぉ!佐野さんばっかりひいきしないでよぉ!」

ケイはあははって笑って、あたしの髪をくしゃくしゃと撫でる。

「してないじゃん!なんだ急に、変なこと言い出して?」

「変じゃないよ!だってぇ・・・・」

「相変わらずのガクコンプレックスな」

おかしそうに笑うケイに、あたしはむうって唸ってみせる。
可愛がるようにあたしの髪を撫でるケイの手が、とってもあったかい。
このあったかい手が、いつまでもあたしの傍にあってくれるように、その時のあたしは、見えない何かに祈ることしかできなかった。


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