BitteR SweeT StrawberrY
           *
その後、ケイに高田さんのことを伝えると、あたしの携帯から高田さんに電話を入れてくれた。
そこから、2日ぐらい経った夜のことだった。
あたしは、いつものように夕飯の支度をしながら、ケイの帰りを待っていた。
夕方、佐野さんからも電話があって、「今日のおかずはなんだ?」とか聞いて来たから、きっと佐野さんも来るんだと思う。
佐野さんがかけてくる、おかずの確認の電話ももう恒例。
三人でご飯を食べてると、なんだかほんとに、あたし達兄妹みたいだなってよく思う。
ケイ曰く、ガクコンプレックスのあたしは、ケイと佐野さんの関係に、時々、ヤキモチを妬いたりするけれど、それでも、仲良しな三角関係は本当に相変わらずなのだ。

時計の針が8時過ぎを差した頃、玄関の鍵が開く音がして、キッチンにいたあたしは、ケイが帰ってきたのかと思って、嬉しくなってリビングに駆け出す。
ドアの開いて、最初に聞こえてきたのは、ケイとは違う女の人の声だった。

「うわ!広い!お邪魔しまーす!」

あたしは、思わずきょとんとして、リビングから玄関を覗きこんだ。

「おかえり~!あれ???」

「ただいま」

そう言って笑うケイの後ろにいたのは、高田さんだった。

「高田さん!?」

あたしは驚いて、思わず叫ぶようにそう聞いてしまう。
ケイの背中からひょこっと顔を出した高田さんが、脳天気に笑って手を振っていた。

「こんばんは~!ほんとに一緒に住んでるんだね~?
ああ、わたし、職業柄、何聞いても驚かないから大丈夫だから!」

「ぶ・・・っ」

高田さんにそう言われて、あたしは無意味に顔を赤くしてしまう。
ケイってば、あたしのこと、高田さんに話でもしたのかな・・・?
あたしは、顔を赤くしたまま、目の前に立っているケイの顔を上目遣いに見上げてしまう。
ケイは、可笑しそうに笑って、そんなあたしの髪をくしゃくしゃって撫でると、リビングの方に歩いて行く。
そんなケイの背中に向かって、あたしは言うのだ。

「あ、ケイ!佐野さん来るって」

「うん、そっか。あいつ、おまえの料理気に入ってるみたいだからな」

あははって可笑しそうに笑ったケイが、ジャケットを脱いで、キッチンカウンターに放り投げる。
あたしは、そそくさとキッチンに走って、とりあえずコーヒーの準備。
無遠慮にリビングに入ってきた高田さんが、なんだか少し嬉しそうな顔をして、床の上に座り込んだケイの隣に、すとんって座った。

そういう光景を見ると、思わず、心の中がざわついてしまうのは・・・
あたしが、ヤキモチ妬きだからかな・・・?
ケイを好きになると、ライバルは男の人だけじゃない・・・
そう、女の人だってライバルなのだ・・・

それぐらい、ケイは魅力的で、同性にも異性に好かれる、それこそ特殊なオーラを持ってるから、例えば、憧れを通り越して、高田さんが、万が一ケイを好きになってしまっても、別になんの不思議もない訳なのだ。
床の上に両腕を付いて、なんだかリラックスなケイは、笑いながら高田さんと何かを話していた。
思わず、むぅって唸ったあたしだけど、とりあえず、平静を装って、コーヒーカップにコーヒーを注いで、リビングにいるケイと高田さんの所にもっていく。

「ありがとう」

そう言って、ケイはいつものようにあたしからコーヒーカップを受け取る。
あたしは、ケイの隣に座っている高田さんにもコーヒーカップを渡す。
高田さんはにっこり笑って、そんなあたしにこう言った。

「ごめんね~、急に押し掛けて来ちゃって。
この間、MEGL、今日ならいいよって言ってたから、そのままお店まで拉致しに行っちゃったんだ、わたし。
ここに来る途中で用件は、MEGLに話したんだけど・・・まぁ、押野さんがいいならって話になってさ。
押野さんを説得にきたんだよ」

「え?な、なんの話し???」

高田さんのその言葉に、あたしはきょとんとして、思わずケイを振り返る。
ケイは、唇だけでくすくすと笑いながら、こう言った。
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