BitteR SweeT StrawberrY
「礼奈、本書きたいんだってさ」
ケイが、誰かを呼び捨てにするのはいつものことだけど、本って単語より、高田さんを『礼奈』って呼び捨てしたことの方が、耳についてしまうなんて、あたしってやっぱり小さい奴だなって思う。
少しぐらい、佐野さんを見習わないとな・・・なんて、変な反省をしながら、あたしは、首をかしげた。
「本???」
「そそ」
ケイがそう答えると、ケイの隣にいる高田さんが、やけに真剣な顔をしてあたしにこう言ったのだ。
「MEGLの半生をね、ドキュメンターとして本にしたいの。
企画はもう編集部に通してあるんだ。
あとは、MEGLとその周辺の人の承諾をもらうだけなの。
わたしね、これは運命だと思ったんだよ。
たまたま、事件の取材をした押野さんが、MEGLの知り合いで、わたしは、こうやってまたMEGLに会えた。
VOYGEのグラビアからMEGLが消えた真相が知りたいって思って、あの時・・・
村木大輔が逮捕された時に、思い切ってMEGLに聞いた。
MEGLすごいなって、正直、あの時思ったの。
だから、これを本にして、なんていうかな、MEGLの生き方をね、読者に知ってもらいたいって思ったの。
もちろん、登場人物はMEGL以外は全部仮名にするから」
「え?」
それを聞いてあたしは、思わず言葉を失った。
ドキュメンターということは、きっと、ケイのこれまでの人生をありのままに本にするってことで、その内容には、少なからずあたしのことが含まれるんだと思う。
あたしのことが含まれるっていうことは、こうやって、あたしが女であるケイを好きで、一緒に住んでることとかも書かれてしまうんだろうか・・・?
それを思った時に、あたしの弱虫な心がうずきだして、思い切り躊躇ってしまった。
少し挙動不審になりながら、あたしは思わずケイを見る。
ケイは、あたしが何を思ったのか察したみたいに、ちょっとだけ、困ったように唇で笑った。
ゆっくりとそんなケイの唇が開く。
「オレは別にかまわないって思ってるよ。
あくまでも、オレはね・・・・」
「ん・・・・」
「こう言ったらなんだけど、自分が恥ずかしい生き方してるとは思ってないから」
「・・・・っ!」
ケイのその言葉が、ガツンって、あたしの心を殴った。
恥ずかしい生き方なんてしてない・・・
確かにそうだ・・・
客観的にみても、ケイの生き方は、ほんとに奔放だけど、それでも、誰かに後ろ指を差されるような生き方ではないと思う。
むしろ、尊敬に値するほど真っ直ぐで、一途で、そこにはポリシーもあって、だからこそ、あたしはケイを好きになったんだ・・・
あたしは、押し黙ってしまった。
その本が本当に出版されたときに、いくら仮名とはいえ、自分が、周りからどんな目でみられるか怖いって、そう思ったあたし自身が、なんだか、すごく情けなくなった。
でも、ここで即答できるほど、あたしは、まだ強くなってはいなかった。
「ん・・・そうだね・・・うんと・・・もう少し、考えさせてもらっていいかな?
あたし・・・弱虫だから・・・まだ、覚悟決まらないや・・・」
思わずそう答えたあたしに、高田さんはにっこり笑ってくれる。
「ああ、いいよいいよ。
ドキュメンタリーっていうと、そうやって躊躇う人も結構多いから、来週の月曜日までに決めてもらって、それで連絡ちょうだい」
「あ・・・は、はい・・・」
こんなところで、勇気の出ない自分が、ほんとに情けない。
みんな、変わったねって言ってくれるけど、やっぱりあたしの根底は、前と何も変わってないんだ・・・・
未だに周りの目を、こうやって気にしてる。
あたしがケイを好きなことは、そんなに恥ずかしいことなの?
ケイは女の人で、そんなケイを好きになって、こんなに幸せなのに、それが世間にバレたからって、どうだっていうの・・・?
心の奥で、強気なあたしがそう叫んでいる、でもその一方で、弱気なあたしが、こうも言っていた。
女が女を好きなるなんて、やっぱりどこかおかしいよ!
それが知れたら、どんな目で見られるか判らないよ?
もし親にばれたらどうするの?
どう説明するの?
同級生とか友達とかにも何を言われるかわからないよ?
急にせめぎ合いを始めた自分の心が、ぎゅって痛くなる。
弱虫はいつまで経っても弱虫で・・・
本当に、自分が情けない・・・・
そんなことを思って、ぎゅってこぶしを握った時、玄関から、鍵が開く音が聞こえてきた。
あたしはハッと顔を上げて、玄関に視線を向ける。
ケイが、誰かを呼び捨てにするのはいつものことだけど、本って単語より、高田さんを『礼奈』って呼び捨てしたことの方が、耳についてしまうなんて、あたしってやっぱり小さい奴だなって思う。
少しぐらい、佐野さんを見習わないとな・・・なんて、変な反省をしながら、あたしは、首をかしげた。
「本???」
「そそ」
ケイがそう答えると、ケイの隣にいる高田さんが、やけに真剣な顔をしてあたしにこう言ったのだ。
「MEGLの半生をね、ドキュメンターとして本にしたいの。
企画はもう編集部に通してあるんだ。
あとは、MEGLとその周辺の人の承諾をもらうだけなの。
わたしね、これは運命だと思ったんだよ。
たまたま、事件の取材をした押野さんが、MEGLの知り合いで、わたしは、こうやってまたMEGLに会えた。
VOYGEのグラビアからMEGLが消えた真相が知りたいって思って、あの時・・・
村木大輔が逮捕された時に、思い切ってMEGLに聞いた。
MEGLすごいなって、正直、あの時思ったの。
だから、これを本にして、なんていうかな、MEGLの生き方をね、読者に知ってもらいたいって思ったの。
もちろん、登場人物はMEGL以外は全部仮名にするから」
「え?」
それを聞いてあたしは、思わず言葉を失った。
ドキュメンターということは、きっと、ケイのこれまでの人生をありのままに本にするってことで、その内容には、少なからずあたしのことが含まれるんだと思う。
あたしのことが含まれるっていうことは、こうやって、あたしが女であるケイを好きで、一緒に住んでることとかも書かれてしまうんだろうか・・・?
それを思った時に、あたしの弱虫な心がうずきだして、思い切り躊躇ってしまった。
少し挙動不審になりながら、あたしは思わずケイを見る。
ケイは、あたしが何を思ったのか察したみたいに、ちょっとだけ、困ったように唇で笑った。
ゆっくりとそんなケイの唇が開く。
「オレは別にかまわないって思ってるよ。
あくまでも、オレはね・・・・」
「ん・・・・」
「こう言ったらなんだけど、自分が恥ずかしい生き方してるとは思ってないから」
「・・・・っ!」
ケイのその言葉が、ガツンって、あたしの心を殴った。
恥ずかしい生き方なんてしてない・・・
確かにそうだ・・・
客観的にみても、ケイの生き方は、ほんとに奔放だけど、それでも、誰かに後ろ指を差されるような生き方ではないと思う。
むしろ、尊敬に値するほど真っ直ぐで、一途で、そこにはポリシーもあって、だからこそ、あたしはケイを好きになったんだ・・・
あたしは、押し黙ってしまった。
その本が本当に出版されたときに、いくら仮名とはいえ、自分が、周りからどんな目でみられるか怖いって、そう思ったあたし自身が、なんだか、すごく情けなくなった。
でも、ここで即答できるほど、あたしは、まだ強くなってはいなかった。
「ん・・・そうだね・・・うんと・・・もう少し、考えさせてもらっていいかな?
あたし・・・弱虫だから・・・まだ、覚悟決まらないや・・・」
思わずそう答えたあたしに、高田さんはにっこり笑ってくれる。
「ああ、いいよいいよ。
ドキュメンタリーっていうと、そうやって躊躇う人も結構多いから、来週の月曜日までに決めてもらって、それで連絡ちょうだい」
「あ・・・は、はい・・・」
こんなところで、勇気の出ない自分が、ほんとに情けない。
みんな、変わったねって言ってくれるけど、やっぱりあたしの根底は、前と何も変わってないんだ・・・・
未だに周りの目を、こうやって気にしてる。
あたしがケイを好きなことは、そんなに恥ずかしいことなの?
ケイは女の人で、そんなケイを好きになって、こんなに幸せなのに、それが世間にバレたからって、どうだっていうの・・・?
心の奥で、強気なあたしがそう叫んでいる、でもその一方で、弱気なあたしが、こうも言っていた。
女が女を好きなるなんて、やっぱりどこかおかしいよ!
それが知れたら、どんな目で見られるか判らないよ?
もし親にばれたらどうするの?
どう説明するの?
同級生とか友達とかにも何を言われるかわからないよ?
急にせめぎ合いを始めた自分の心が、ぎゅって痛くなる。
弱虫はいつまで経っても弱虫で・・・
本当に、自分が情けない・・・・
そんなことを思って、ぎゅってこぶしを握った時、玄関から、鍵が開く音が聞こえてきた。
あたしはハッと顔を上げて、玄関に視線を向ける。