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     *
それから三日後、あたしは、お店への出勤途中に、高田さんへと電話をかけた。
電話口に出た高田さんに、あたしは、笑いながらこう言った。

「あたしの大好きなケイだから、ちゃんと真剣に書いてくださいね。
あたしのことも書いてかまいませんから」

電話の向こうで、高田さんも笑っていた。

「ポリシーにかけて、変なことは書かないから大丈夫!
じゃ、このまま企画すすめちゃうから、きっと、何度も取材にいくと思うけど、その時はよろしくって、MEGLにも、えと・・・佐野さんだっけ?MEGLの元彼・・・にもそう言っておいてね!」

「はーい、わかりました~」

「これから原稿書き始めるとして・・・そうだな、早ければ半年で出版になるかな?」

「え?そんなに早く出るんですか?」

「出るよ~~!うん・・よし、気合入ったぞ!
あ~・・・ごめん!ちょっとこれから取材だから!また連絡するね!
じゃあね!」

そう言って高田さんは慌しく電話を切る。
あたしは、切れた携帯を見つめたまま、思わず、可笑しくなって笑ってしまった。
雑誌記者さんはほんとに大変そうだな・・・・
そう思った見上げたビルの谷間の空は、抜けるような・・・とまではいかないけど、水色かかった綺麗な青だった。

人ごみを掻き分けて、あたしは、ケイのお店に向かう。
まだ開店準備中のお店には、きっと、新城さんも真帆ちゃんも雛乃ちゃんも、そしてケイもいるはず。
あたしは、熱い日差しに目を細めながら、お店の前に立って、一つ大きく息を吐いて、ドアを開けた。

「おはようございまーす!」

あまりにも元気の良すぎるあたしの声に、お洋服を整理してた新城さんがびっくりしてこっちを振り返り、レジで開店作業をしていたケイがきょとんとあたしを見て、掃除をしていた真帆ちゃんと雛乃ちゃんが、目をぱちぱちさせながら、やっぱりあたしを見る。

「あ・・・・」

みんなの反応がそんなだったから、あたしは思わず、テレて変な笑い方をしてしまった。
すると、レジにいたケイがぷって吹きだして、それに釣られるように、新城さんも真帆ちゃんも雛乃ちゃんも、思い切り笑い出したのだった。

「あはは!おはよう優さん!つか、なんでそんなに元気なの!?」

思いっきり爆笑した新城さんが、涙目になりながらあたしにそう言う。

「え!?いえ・・・べ、別に何も・・・あはは・・・」

「きっと、なんか良い事でもあったんだろ!」

レジで開店作業をしていたケイがそう言うと、やっぱり涙目になって爆笑。

「もぉ!そんなに笑わなくてもぉ!」

顔を真っ赤にして抗議したあたしの脇を、笑いながら真帆ちゃんと雛乃ちゃんが横切っていく。

「優子様、お元気なことはいいことです、おはようございます」

「ですです~!おはようで~す!」

「はぅ・・・っ」

あたしは、余りにも恥かしくなって、思わずその場にへたりこんでしまった。
恥かしいけど・・・
なんだか、この雰囲気がとっても好き・・・
そう、ここが、あたしの職場なんだ・・・
あたしが、自分で選んだ、あたしの職場・・・
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