BitteR SweeT StrawberrY
あたしは、自分にそう言い聞かせて、もう一度深呼吸すると、また必死で笑って、言葉を続けた。

「ケイと一緒に、お仕事するの!いろんな意味でパートナーになりたいから!
だから・・・・・」

「うん・・・・」

「早く・・・元気に、なってね!!!」

あたしの目から、あたしの意思に反して、涙が溢れようとしている。
それを隠そうとして、あたしは、また、笑った。
ケイは、点滴の針がささった腕をゆっくりと持ち上げて、あたしの髪をそっと撫でた。

「うん・・・・また、優子と・・・仕事・・・したい・・・」

「またしようね!お仕事!ケイの大好きなお仕事!あたしも大好きだよ!この仕事!」

「うん・・・優子、ガクに・・・・会ったら・・・」

「うん?」

「伝えて・・・」

「何を?」

「おまえ・・・もう、いい加減・・・他の人と、結婚しろって、今まで、ありがとうって・・・」

その言葉を聞いて、あたしの心が、またざわざわと不安の音を上げてくる。
だからあたしは、そんな不安を誤魔化すようにこう言ったのだ。

「なにそれ!そんなの、佐野さんが来たら、ケイが言えばいいよ。
今までありがとう、とか、まるでお別れみないじゃない?
ダメだよ、よくなって仕事復帰するんでしょ?」

「ああ・・・それもそうだな・・・・」

「うん、そうだよ!だから、結婚のことは、自分で言ってあげなよ。
そろそろ、来ると思うよ、佐野さん」

「もう、そんな時間・・・?」

「うん。
あ、外ね、今、雪降ってるよ。電車遅れてなければいいけど」

あたしが、そう言って何気なく、窓の外を見たとき、不意に、ケイが、ぎゅってあたしを抱き寄せて、消え入りそうな声で・・・
でも、はっきりと、こう言ったのだ・・・

「優子に・・・会えて・・・よかった・・・」

あたしはハッとすると、瞳を閉じているケイに向き直って、そのほっぺに、自分のほっぺを摺り寄せながら、こう答えたのだ。

「それは、あたしの台詞だよ・・・
あたしも・・・ケイに会えて・・・よかった。
大好きだよ・・・」

「あり・・がとう・・・
優子の・・・こと・・・・好きだよ・・・」

「うん・・・嬉しいよ・・・」

「ありが・・・とう・・・」

そう言って、ケイは、ゆっくりと瞳を開くと、まっすぐにあたしの顔を見て、苦しいはずなのにやけに穏やかに、優しく、そして、すごく綺麗に・・・にっこりと笑ったのだった。










それが・・・
あたしが見た・・・
ケイの・・・
最後の・・・
笑顔だった・・・





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