BitteR SweeT StrawberrY
今日は、なんとなく休みとって、丸一日、こうやって、空を眺めて時間をすごしている。
ケイの居ない部屋。
でも、ケイの荷物は、何もかも、全部、そのままで残っている。
あたしは、その荷物を処分するつもりもなかった。

ぼーっと眺める空の隅に、長くたなびく飛行機雲。
空の高くを飛ぶあの飛行機が、ケイのいる場所まで飛んでいってくれるなら、あたしは、いくらでもお金をつぎ込んで、ケイに会いにいくのに・・・

あたしは、手元のフルーツ皿から、バースデイケーキ代りの大粒苺を取って、口に運んだ。
甘い果汁と新鮮な香りが、口の中に広がる。

「寂しいよ・・・・」

あたしは、その苺の香りを目一杯感じながら、思わずそう呟いた。

去年の誕生日は散々で、大輔に裏切られたり、いきなりケイが倒れたり・・・
ほんと散々だったけど・・・
なんだか・・・
今では、いい思い出だと思う・・・
あの時、ケイが買ってきてくれた、ストロベリータルト・・・
美味しかった・・・・
また、一緒に食べたいのに・・・
もう・・・
いないんだね・・・
ケイ・・・

あたしの心に広がる青い色をした寂しさが、あたし自身に、ケイが居ないことを痛いほどに思い知らせる。

あの日・・・
ケイが遠い空に帰った日・・・
あたしは泣けなかった・・・
我慢しちゃったんだ・・・
笑って見送ってあげたかったけど・・・
笑えなくて・・・
でも、泣いたら行けないと思っていたから・・・
泣くこともできなくて・・・・

「もう・・・・泣いていいかな?」

あたしは、大粒苺をかじりながら、思わず、そう呟いた。

寂しくて、切なくて・・・
心が痛いよ・・・
まだ・・・
こんなに好きなのに・・・
もう・・・
いないんだね・・・
もう・・・
触れないんだね・・・
もう・・・
あたしに向かって・・・
笑ってくれないんだね・・・

「寂しいよぉ・・・・」

胸が熱くなる。
ケイがあたしにくれたものは、この部屋だけじゃなくて。
もっともっと、沢山あって。
あたしが持てなかった勇気とか、広い視野とか、あたしが今まで感じたことなかった、人を思う切なさとか、愛しさとか、幸せとか、もう、言葉にしたらキリがないほどの沢山の物を、ケイはあたしにくれたんだ。
誰になんて云われても、やっぱりあたしはケイが好きで。
好きで・・
ほんとに好きで・・・
こうやって、あたしの傍にいなくなって・・・
遠く遠く、ほんとうに手の届かないところに行ってしまったけど・・・
あたしの、ケイの思う気持ちは・・・
全然変わってない・・・

だから・・・
あたしは・・・
今・・・
すごく切なくて、悲しくて、寂しくて・・・

あたしの瞳には、2ヶ月分の涙が、今、一気に溢れてきてしまった。
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