BitteR SweeT StrawberrY
もう、泣いてもいいよね・・・?
寂しいよって、言っていいよね・・・?
あたし、頑張ったよ・・・・
ほんとに、頑張ったから・・・
もう泣いていいよね・・・?

大粒苺をかじった瞬間、たまりにたまっていたあたしの涙が、まるで、洪水のようになって、後から後から溢れ出てきて止まらなくなってしまった。
子供みたいに膝を抱えて、でも、口の中に苺を頬張って、あたしは、バカみたいに、そのまま泣き続けて。
口の中にまで涙が伝って、甘い苺の味が、少し苦く感じた。
涙で曇った視界で、あたしは、ふと、フルーツ皿の向こう側見る。
そこに置いてある、一冊の本。
高田さんが書いた、あのドキュメンタリー・・・
その表紙を飾っているのは、綺麗で華麗なケイの姿だった。
あたしは、ぼろぼろと涙を零したまま、その本を手にとって、ぱらぱらとページをめくってみる。

その最後のページには・・・・

ケイが倒れたあの日・・・

あたしの携帯で、ケイが撮った、あの幸せそうな笑顔のあたしとケイの写真が、掲載されている。

出版前、高田さんにプライベートな写真はないかって聞かれて、それで、あたしの決意の証にって、そう思って渡した、この写真。
あたしは、もう、誰に何を言われていいもから、こうやって、ほんとうに、ケイのことを好きだっていうことを・・・
残しておきたかった・・・
だから、誰に何を言われても、どう思われてもいいから、この写真を、モザイクなんかいらないから、載せていいってそう高田さんに言って、載せてもらった。

あたしは・・・
ほんとに・・・
ケイのことが好きで・・
好きで・・・
好きで・・・

ケイのくれた沢山のものが宝物で、今、ここに、ケイが居ない現実を、とても悲しく思う。
あたしは、涙でかすんだ視界で、その写真を眺めながら、何度も何度も、笑顔のケイを指先で撫でた。

泣いても、泣いても、ケイはもう戻ってこない。

だけど・・・
ねぇ・・・
ケイ・・・
あの日・・・
最後の日に、ケイに話したあたしの目標は、あたし、必ず達成させるからね・・・
ケイの大好きだった仕事、あたしも大好きだから、だから、必ず極めてみせるから・・・
傍に、ケイはいないかもしれないけど・・・
でも、あたしはね、諦めないから・・・
せっかく、ケイが開いてくれた、あたしの世界・・・
もっと広くしてみせるから・・・

だから、泣かせて・・・
今は泣かせて・・・
泣くだけ泣いたら、あたし・・・
また、歩き出すから・・・

一人でも・・・
どんなに寂しくても、悲しくても・・・
たとえ転んでも・・・
必ず起き上がるから・・・
だから、今は、泣かせてね・・・
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