BitteR SweeT StrawberrY
【6】~M~
その出来事があってからのあたしは、ますます、何かおかしなことになってた。
ふとした瞬間にケイの顔を思い出して、一人でじたばたしてみたり、急に、新しい化粧品を買ってみたり、あの時のことを思い出して、どきどきして体が熱くなったり、もう、ほんとに、自分でも重症だって思うほど、ほんとに・・・おかしなことになってた。

思い出すだけでも恥ずかしい・・・・
恥ずかしいのに・・・

「優子ちゃん?どうしたの?」

あたしは、大輔に名前を呼ばれてハッと顔を上げた。
出張から帰ってきた大輔に、お土産を渡すからと連絡をもらったのは、会社が終る直前のことだった。
待ち合わせたレストランの一席で、目の前の大輔に視線を向けながら、あたしは、思わず誤魔化すように笑ってしまう。

「あ・・・ご、ごめん!それで、なんだっけ???」

久しぶりに大輔に会ったのに、ケイのこと考えてるなんて・・・
馬鹿だなぁ、あたし・・・
大輔は、ぼーっと上の空のあたしに気付いているのか、いないのか、のほほんと笑って言葉を続けた。

「いや、雪祭りにぶつかって、そこに初目クミの雪像があったって話しだよ。
まぁ、優子ちゃんは初目クミとか知らないもんな・・・ていうか、どっか具合でも悪い?
なんか、ぼけっとしてるよ?」

「あ・・・そ、そうかな?仕事で・・・ちょっと、疲れちゃったのかな?」

あたしは、内心どきっとしながらも、そう言って愛想笑いをしてみる。
大輔は相変わらず朗らかに笑って、「そうか、そうか。決算近いしね、大変だよな、事務処理が」と頷いてくれた。
そんな大輔を目の前にして、あたしの胸に罪悪感の矢がちくっと刺さった。
大輔はほんと良い人。
もう三年も付き合ってるから、どきどきはさすがになくなったけど、あたしのことを良くわかってくれてる・・・と思う。

優しいところも、朗らかなところも、付き合い出した頃と変わってない。
好青年なところも、裏表のなく明るいところも、何も変わってないし、不満があるとしたら、ちょっとオタク気味なところだけ。
穏やかだから、結婚したら子供の良いパパになってくれそうだって、結婚してる同僚にも言われた。
あたしも、そう思う。
両親も大輔のことは知ってるし、取引先の営業マンだから、上司だってあたしと大輔が付き合ってることを知ってる。

だから、周りの人たちは「大輔と結婚」というレールを進むことを、期待しているんだと思う。
大輔と結婚することが、あたしの幸せ・・・・それが、周りの意見なのだ。

『自分が、後悔しないような選択をしたらいい。あとになって、なんで結婚したんだろうって思うぐらいなら、周りがなんて言おうと、しなければいい』

あの時、ケイに言われたその言葉が、ふとあたしの頭の中に浮かんだ。
あたしは・・・
どうしたいんだろう・・・
このまま、大輔と、結婚したいんだろうか・・・?

目の前の大輔は、さっきから北海道のお土産話しを冗談交じりに聞かせてくれている。
きっと、あたしが、いま、複雑な気分になっていることに気付いてないんだ。
気付くはずもないけど・・・・
あたしが、上の空になりすぎなのかな?

あたしは、一体、どうしたいんだろう・・・



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