BitteR SweeT StrawberrY
             *

こんなに走ったのは久しぶりだから、もう、心臓も肺も破裂しそうなほど、息が上がっていた。
あたしの手を掴んでいるのは、さほど大きくない手だった。

マンションの前に辿りついたあたしは、大きく息をしながら、隣にいるその人を見た。
アーミージャケットとアーミーブーツ、迷彩のカーゴパンツ。
どこのアーミーかぶれだろう・・・
でも、こんなごっついスタイルには似合わないほど、甘い香水の匂いがする。

その人の、少し長めの前髪から見えた横顔は、驚くほど綺麗だった。
こういう人を、ビジュアル系って言うのかな・・・・?
ぱっと見ただけじゃ、男の人なのか、女の人なのか、判らない。
なんだかよく判らないけど・・・ドキドキする・・・

「あ・・・あの・・・えと・・・」

「ぶ・・・っ、あはは、あはははは!」

お礼を言おうと口を開きかけたあたしの言葉をさえぎるように、その人は・・・
何故かいきなり笑いだしのだ。
何がなんだか判らないまま、あたしは、またしてもきょとんとしてしまう。

「え?なに?なに?え、なんで笑うんですか・・・っ?」

「変なオーラ出てるよ!」

その人は、そんなことを言って、あたしの顔を少し高いところから見つめていた。

変なオーラって・・・なんだ????
あたしから、変なオーラってことかな???

「え???いえ、その・・・変なオーラですか???あたしからってことですか???」

「おまえ以外誰がいんの???」

おまえ・・・だと!?
初対面でおまえ呼ばわり!?
なんなのこの人!?

ちょっとムッとすると、あたしがムッとした理由に気付いたのか、その人は、「あ~ごめん」と言って、今度は、やけに優しくあたしに笑い掛けた。

そして、男の人にしては高くて、女の人にしては低めな、ちょっとハスキーな声で言ったのだ。

「ああいうのに絡まれるやつってさ、大抵、変なオーラ出てんだよ。絡まれ易いオーラっていうの?」

「・・・・・・・・・・あ」

そう言われて、妙に納得してしまったあたしが、ここにいる・・・
あたしは大きくため息をついて、上目使いにその人の、その綺麗な顔を見た。

「確かに・・・そうかも・・・しれない・・・高校生の頃から、変な人に絡まれるの・・・あたしばっかり・・・」

「だろうな。なんとなく判るよ」

口調は男の人みたい、でも、この人・・・・

「あ・・・あの」

「なに?」

「もしかして、すごく失礼なことかもしれないけど・・・・初対面でなんなんですけど・・・」

「うん」

「男の人ですか?女の人ですか??」

「・・・・・・・・。」
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